ニッポンが誇るロックの至宝=仲井戸麗市についてのFAQ
MIKIO ARIGA
RCサクセションなどさまざまな場所から、その類い稀な感性を6本の弦を通して放ち続けてきた〈CHABO〉こと仲井戸麗市。このたび生誕60周年を記念してリリースされるリスペクト・アルバム『OK!!! C'MON CHABO!!!』には、彼の多大な影響力を窺わせるビッグなメンツが集結!……そこで、ヤング・パーソンズから寄せられるであろうFAQをザザッとまとめてみました!
Q デビューしたのはいつ頃なのですか?
A 兄からもらった割引券で渋谷にあった生演奏の店、青い森を訪れた時、そこで唄っていた加奈崎芳太郎と出会い、後に古井戸を結成。結成時4人組だった古井戸はやがて3人となり、デビュー時には2人組に。72年にインディー・レーべルのエレックから『古井戸の世界』でデビュー。ブルース、フォークを基調とした曲が中心でしたが、気軽に作った“さなえちゃん”のヒットで一躍人気者に。椅子に座って存在感ある歌を聴かせた加奈崎と、立ったまま表情豊かなギターを聴かせるCHABOの対比が個性的なデュオでした。
Q RCサクセションではどのような活躍をしていたんですか?
A CHABOがRCサクセションに加わったのは78年からで、正式加入は古井戸が解散した79年。ちょうどRCがフォーク・トリオからロック・バンドに変わろうとしていた時期で、以前から親交の深かった忌野清志郎の誘いで加入。ローリング・ストーンズのミック=清志郎、キース=CHABOといったような存在感で、バンドのフロントを飾りました。ギタリストとしてバンドを牽引するだけでなく、作曲やリード・ヴォーカリストとしても活躍し、活動休止する90年まで、忌野清志郎の右腕として欠かせない存在でした。
Q 清志郎さんとはどういった間柄なのですか?
A 二人の出会いは70年頃、渋谷にあったライヴハウス・青い森でした。CHABOは古井戸、忌野清志郎はフォーク・トリオだったRCサクセション。何度か共演するうちに親しくなり、互いの家を行き来して音楽談義をしたりするような仲に。会う時間がなくなってくると文通をしたというから、二人の絆の強さは並みならぬものだったとわかります。親友というより音楽的同志でもあり、RCで共に活動した10年を経て互いにソロとなっても、もっとも近しい仲間としてたびたび顔を合わせていました。
Q ファンの間で語り継がれているエピソードはありますか?
A CHABOと清志郎が親しくなったきっかけは、どちらかが相手にチョコレートをあげたからだと言われていますが、どっちがどっちにあげたのか本人たちも忘れていて、結局いまも答えが判明していません。親しくなった頃、仲井戸はフォトグラファーのおおくぼひさこさんと暮らしていましたが、そのお宅に清志郎はよく遊びに来て、泊まっていくことも珍しくなかったとか。清志郎が遊びに来るときは「奥さん、すいませんねえ」とコーラを持ってくるのが常で、お泊まりの時には大瓶だったそうです。
Q どんなところが独創的なのですか?
A RCサクセションでは、清志郎と並んでバンドの二枚看板として活躍、あうんの呼吸で演奏を盛り上げるギタリストとして、個性的なスタイルを示していました。一方、ソロ活動で見せる伝統的なブルースやリズム&ブルース、フォークやロックンロールなどへの深い造詣を下敷きにした曲と、繊細な感性で綴る歌詞で編む歌には唯一無二の味わいがあります。音楽への愛情と同等に言葉への思いも深く、エッセイ集など著書も4冊出版しているほか、それを朗読するポエトリー・リーディングも行ってきました。
Q どんなアーティストに影響を与えている人なのですか?
A リスペクト・アルバム『OK!!!C'MON CHABO!!!』の発起人である寺岡呼人は、「CHABOに出会わなかったら、僕はここにいなかった」というほど。彼の呼びかけでこの作品に参加したのは、奥田民生、ザ・クロマニヨンズ、斉藤和義、TRICERATOPS、桜井和寿、岡本定義(COIL)、山崎まさよし、宮沢和史、Leyona、浜崎貴司、吉井和哉、曽我部恵一、YO-KING。ギター、メロディー、言葉──CHABOのどこに惹かれたのか、どこが素晴らしいのかをそれぞれが自身のスタイルでカヴァー曲のなかに映し出しています。この面々のほとんどは寺岡と同じく、多感な思春期にRCサクセションを直に触れ、見ることができた世代。やがてバンドを組み、90年代以降はみずからがバンド・シーンを牽引してきた人たちです。他にも、彼らと同じ世代でRCサクセションの影響を受け、彼のギターに触発された人は数え切れないでしょう。3月5日に行われた還暦祝いのイヴェントには、リスペクト盤に参加したメンツのほかに山田武郎(THE イナズマ戦隊)、佐藤タイジらも参加しました。
Q 最近はどのような活動をしているのですか?
A RCサクセション時代から続いているソロ活動では、ジョン・レノンと同じであることを誇りにしている自身の誕生日(10月9日)に、毎回趣向を凝らしたライヴを行っています。清志郎が亡くなった2009年は、彼が書いたRCナンバーをひとりで歌うライヴを敢行、その模様はアルバム『I STAND ALONE』に記録されました。還暦を迎えた2010年は、全国60か所を巡るツアーを行い、最終日のSHIBUYA-AX公演では、宮沢和史や寺岡呼人らも駆けつけ、盛大な誕生祝いになりました。元ストリート・スライダーズの蘭丸こと土屋公平と91年に組んだユニット=麗蘭も、お互い多忙でありながら継続中。毎年末に京都磔磔で行うライヴは毎回プレミアムになっていますが、音源は公式サイトを通じて入手することができます。また、麗蘭は東京は六本木のBillboard Live TOKYOでも昨年からライヴを行っています。