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フルトヴェングラー生誕125周年記念 最新デジタル・リマスター音源による名盤SACDシリーズ

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/05/10   12:33
更新
2011/05/10   16:11
ソース
intoxicate vol.90 (2011年2月20日発行)
テキスト
text:伊藤圭吾(渋谷店)

第1回発売10点に続き、第2回発売9点が、2/23発売!

音楽には寿命がある。一世を風靡した作品はやがて忘れられ、演奏スタイルは古び、今鳴り響いた音は大気中に消え、偉大な音楽家たちは死に、録音されたデータは時間をかけながらゆっくりとノイズの向こうへ消えてゆく。しかし、宿命的減衰に抗いつつ、音楽はまた永遠を志向する。

フルトヴェングラー。今年、生誕125年となる偉大な指揮者の遺した録音の数々を、我々は時の経過に抗いつつ21世紀の今日も聴き続けている。より良い、より鮮明な音で、少しでも彼が指揮台に立ちオーケストラに向かい指揮棒を振り下ろした瞬間に近く…演奏が行われたその時その場所に居合わせることのできなかった我々のそんな渇望。それに応えるべくこれまでも数多くのレーベルが試行錯誤しつつSP、LP、CDのリリースを行ってきた。いずれにも一長一短あり、中には絶賛すべき出来もあったが、しかしそこには常に、半世紀前に失われた時間への癒しがたい渇きが諦念と共に残った。「やはりこれ以上を望むことはできないのか」…だが、今や状況は変わろうとしている。

このたび、【EMI】から2期19タイトル発売されるSACDシリーズは、保管された録音原盤、失われている場合は能う限りオリジナルに近い音源を用意し、丁寧かつ慎重なDSDリマスタリングを行いソフト化されている。CD再生した場合においてもその成果並々ならぬものと感じられるが、SACD再生した際のその効果は驚くべきものがあり、CD再生時の音質はもちろん、これまで発売された様々な同演奏異盤とも別次元の音質と断じて良い。

この音を耳にしたとき、我々は失われた過去が、まだ見ぬ(聴かぬ)未来と同義であることを知るだろう。音楽が夢見る永遠を、我々もまた聴くことになるだろう。決定的な音盤の登場を取り急ぎ報告する。