第2期プレフューズの幕開けか?
約2年前、プレフューズ73、サヴァス&サヴァラス、ダイアモンド・ウォッチリスツという3つのプロジェクトでアルバムをほぼ同時期にリリースしたギレルモ・スコット・ヘレン。エディットを駆使したブレイクビーツを基調とするプレフューズ73、トロピカリズモ経由のアシッド・フォークといった風情のサヴァス&サヴァラス、オーガニックな感触でネイキッドなうたを聴かせるダイアモンド…と、それぞれに特色はあったものの、サイケデリックでくぐもった音像への指向は一貫しており、全てのプロジェクトが根底では繋がっていることを実感させた。
そして、この度届けられたプレフューズ73の新作は、これまではプロジェクトごとにアウトプットしてきた要素をひとつに統合したような作風。基本的にビート・ミュージックに特化していた過去作品とは趣が異なり、女性ヴォーカルをフィーチャーしたアナログでオブスキュアな音像が特徴となっている。ヴォーカリストに起用されたのは、今年1月に亡くなったブロードキャストのトリッシュ・キーナン、ゾラ・ジーザス、マイ・ブライテスト・ダイアモンドのシャラ・ウォーデンなど、計7名。茫洋としたノイズの向こうから彼女らの歌声がうっすらと浮かび上がってくる度に、カオティックで狂気じみた白昼夢を見ているような気分にさせられる。不気味に蠢くノイズと儚げなヴォーカルがハーモニーを奏でる部分など、アニマル・コレクティヴをダークにしたような印象もあり、ブルックリン界隈のシーンと共振する作品とも言えるだろう。
プレスリリースでスコットは「このアルバムは他のアルバムから離脱したような作品に感じられるかもしれないが、リスナーを遠ざけたり、混乱させるために作ったんじゃない」と述べている。これまでプレフューズ73の作品を愛聴してきた人も、まずは先入観を捨て、まっさらな耳で向き合えば、そこにはマジカルでミステリアスなトリップが待ち受けていることだろう。