ラファエル・サディークを輩出したグループの偉大なストーン・ローリンを振り返っておこう
ちょっといい話として……ジョン・レジェンドとツアーをしたラファエル・サディークが、ジョンの若いファンたちにライヴを褒められ、〈オジサンもがんばったらジョンみたいになれるよ!〉とか言われたというエピソードを聞いた。もちろんトニ・トニ・トニは常識である。もし音楽の聴き方にそういうものがあるのだとしたら、もはや一般教養に近い……と思いたい。が、その後も名前を使った活動があるとはいえ、実質的な解体からはもう15年以上が経っているし、例えばビートルズさんのように繰り返し語り継がれているわけではないから、トニ・トニ・トニを知らないリスナーが多くいても仕方がないだろう。そんなわけで、ここでは入門編として彼らと派生アクトの大まかな概要をリリースと共に紹介しておこう。
カリフォルニアはオークランドで結成されたトニ・トニ・トニは、ドウェインとラファエルのウィギンス兄弟に、従兄弟のティモシー・クリスチャン・ライリーを加えたトリオ(+準メンバー的なライヴ・バンドとして、カール・ウィーラーら)である。シーラ・Eのバンド・メンバーとしてプリンスのツアーに帯同したこともあるラファエルが中心人物ではあったが、87年にマコーラからデビューして以降、3人はそれぞれ独自に作曲や演奏の技を磨き上げていく。グループとしての歩みはディスクガイドの通りだが、重要なのは、彼らの生音志向や高いミュージシャンシップがその後のネオ・ソウルに繋がるR&Bの現行モードを作り上げたことだろう。そこから個々が多方面で活動することによって、そのモードやマナーはシーン全体に拡散/波及していったのだ。
96年の4作目『House Of Music』を最後にグループは解散状態になるものの、ボビーVやグレン・ジョーンズら多くのアーティストが折に触れて楽曲を取り上げたり、アリシア・キーズがトニ・トニ・トニの名でドウェインらを招いたり、彼らへの敬意が途絶えることはないだろう。やはり一般教養に近い……と思いたい。
▼関連盤を紹介。
左から、ボビーVの2009年作『The Rebirth』(Blu Colla Dream)、グレン・ジョーンズの2006年作『Forever』(Shanachie)、アリシア・キーズの2003年作『The Diary Of Alicia Keys』(J)