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ATARI TEENAGE RION

連載
NEW OPUSコラム
公開
2011/06/25   00:30
更新
2011/06/25   00:30
ソース
bounce 332号(2012年5月25日発行号)
テキスト
文/佐藤 譲


圧倒的な速度で叩き付けるビートとノイズをつんざくように放たれる絶叫——衰えるどころかますます際立つ〈デジタル・ハードコア〉のカタルシス。90年代、もっともヘヴィーな電子音楽とメッセージで、地元ドイツでも発禁処分を受けた伝説のバンド、アタリ・ティーンエイジ・ライオット(ATR)。彼らの12年ぶりとなるニュー・アルバム『Is This Hyperreal?』は、システムの呪縛と崩壊が同時に進行する〈混沌の時代〉だからこそ、彼らの存在が有効であることを物語っている。2010年の復活を受けて制作された本作ではビートやリフの輪郭がクリアになったほか、“Digital Decay”でエレクトロへの接近を見せるなど、音がアップデートされているが、バンドの方程式に変化はない。むしろないからこそ彼らの発明が無二であると証明している。なかでもスティーヴ・アオキ参加曲“Codebreaker”は、爆音使いの新旧カリスマが邂逅を果たした破天荒なアンセムだ。

また、新作に先駆けて登場した9mm Parabellum Bullet監修の編集盤〈Introducing Digital Hardcore〉は、壮絶な曲のみを集めた潔い一枚。システムと体制にNOと叫び続けるATRの闘争史と現在を、逆流する血液を感じながら体験してほしい。