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まったく変わらないところが素晴らしい! ブラック・リップスの新作

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2011/06/08   22:27
更新
2011/06/08   22:28
テキスト
文/久保憲司

 

ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ 〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、7月にニュー・アルバム 『Arabia Mountain』を引っ提げた来日公演を控えるガレージ・ロック・バンド、ブラック・リップスについて。かのマーク・ロンソンをプロデューサーに迎えた本作は、これまでとまったく変わらないところが素晴らしくて――。

 

いま、世界でいちばんカッコいいバンドと言えば、誰が何と言おうとブラック・リップスでしょう。来日もします。2回目です。最高のガールズ・パンク・バンド、ヴィヴィアン・ガールズもいっしょに来日します。ヤバいです。いっしょに騒ぎたいです。そんなブラック・リップスの6枚目のニュー・アルバムが出ました。『Arabia Mountain』というふざけたタイトルもいいです。

プロデューサーは、なんとマーク・ロンソン。自身でもいいアルバムを作っていますが、リリー・アレン、エイミー・ワインハウスを手掛けたことでとっても有名です。セレブDJ&プロデューサーなんですけど、レトロでオシャレな音を作らせたら、この人に敵う人はいないです。ルックスもいいし、僕もこんなセンスのいいプロデューサーになりたいです。マーク・ロンソンがプロデュースするということで、海外におけるブラック・リップスがどれだけ重要かというのがよくわかってもらえるでしょう。ただのガレージ・バンドじゃないんですよ。ディアハンターと仲がいいというのもヤバいでしょう。

そんなブラック・リップスですが、マーク・ロンソンのプロデュースによってさぞや大変身したのか、と思ったんですが、全然変ってないですね。そこがブラック・リップスのいいところです。何者もブラック・リップスを変えられないんです。本当はエイミー・ワインハウス“Rehab”のような管楽器がガンガン入った曲を作るんだろうなと思ってたんですが、ブラック・リップスは俺みたいな守銭奴じゃないです。

5作目『200 Million Thousand』でワイルドなガレージ・サウンドに仕上がってたんですが、今作は4作目『Good Bad Not Evil』な、ちょっと音がいい感じが戻ったって具合かな。『Arabia Mountain』はジャケットもちょっとお金がかかっています。USでヨーロッパのコミックを紹介していた「ヘヴィー・メタル」という雑誌風ですかね。

とにかく本作からのシングル“Go Out And Get It”のPVでも観てください。元気になるすよ。こんな放射能だだ漏れの国にいず、このPVみたいにビーチで楽しくやりたいですね。