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フジファブリック

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NEW OPUSコラム
公開
2011/07/28   14:40
更新
2011/07/28   14:41
ソース
bounce 334号 (2011年7月25日発行)
テキスト
文/宮本英夫

 

多くのアーティストが支えたライヴであり、バンドの新章が幕を開けた運命的なステージ

 

フジファブリック_A

 

ライヴDVD「フジフジ富士Q -完全版-」は、一期一会の感動に包まれた昨年のフジファブリック主催イヴェント〈フジフジ富士Q〉の貴重な記録である。もともと本企画は志村正彦の長年の夢として発案され、一昨年末の彼の急逝により実施が危ぶまれたものの、残されたメンバーとスタッフの強い意志と参加アーティストのサポートにより開催が決定。本作はフジファブリックの演奏をバックに、15組のアーティストが思いを込めて彼らの楽曲を歌い継いだ、4時間に及ぶ高品質なステージがほぼノーカットで収められている。

しんみりムードも予想されたが、会場の雰囲気は予想以上に明るく、一番手の奥田民生から快調にライヴは進む。ハナレグミのようにみずからのスタイルに引き込んで歌うタイプや、クボケンジ(メレンゲ)のように楽曲に入り込むタイプなど、各々の解釈がおもしろく、観ていて飽きない。氣志團の“茜色の夕日”、吉井和哉の“Anthem”など心の琴線に触れる名唱も多く、本編ラストを飾ったくるりの“銀河”はまるで自身の持ち歌かと思うほどハマっている。これだけ多様なスタイルの楽曲を書き続けた志村の才能の大きさを思う時、いまさらながらにその不在が惜しまれてならない。

しかし、フジファブリックはこれからも続いてゆく。アンコールで山内総一郎が歌う“会いに”は、新生フジファブリックの可能性がはっきりと聴き取れる名演だ。このDVDは終着点ではなく、新しい歴史の幕開けである。

 

▼関連盤を紹介

左から、フジファブリックの2010年作『MUSIC』、奥田民生の2010年作『OTRL』(ソニー)、ハナレグミの2009年作『あいのわ』(スピードスター)、吉井和哉の2011年作『The Apples』(EMI Music Japan)、くるりのベスト盤『ベスト オブ くるり/TOWER OF MUSIC LOVER 2』(スピードスター)