ベルリンが生んだ優雅なロウ・ソウル
2002年の初作はドイツ語詞がメインながらも注目を集め、USラッパー勢とのコラボも加えた2006年の2作目ではネオ・フィリーに接近し、日本においてもさらなる支持を得た南アフリカ系ドイツ人シンガー。そんなジョイ・デナラーニが3作目『Maureen』をリリースした。モーメンツを引用し、スウィート・ソウル然としたヴァイブを放つ“Wo Wollen Wir Hin Von Hier?”などはわかりやすい例だが、それ以外にもスティーヴ・マッキーやアンソニー・ベルのプロデュース、ラリー・ゴールドの優美なストリングスなど、フィリー勢のサポートが光る内容は前作並み、いやそれ以上に芳醇なソウルを感じさせる仕上がりだ。1曲を除いてすべてドイツ語詞ながら、丸みを帯びたジョイの歌声はそれを気にさせず、むしろ同郷のサモン・カワムラが手掛けた“Frei”や“Nie Wieder, Nie Mehr”ではヒップホップ的なビートの粒立ちにパーカッシヴなドイツ語の響きが似合うというおもしろみも生じている。欧州産R&Bの傑作がまた誕生した。