ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、来年1月に来日公演も控えるカサビアンのニュー・アルバム『Velociraptor!』について。アヴァンギャルドなサイケ感のなかに最高のポップセンスを漂わせる本作。そのアイデアの出所が本当に不思議で――。
いま頃、何を血迷ったか、ブログ始めました。しかも〈ギタリスト100選〉とかです。よかったら、読んでください。Twitterの140文字に飽きて、もうちょっと喋りたいかなと思って始めてしまいました。
適当につぶやくというのは楽しいですね。でも、僕には140文字は短すぎました。お前どんだけ喋りやねん、という感じがしますが、僕みたいな大阪人には140文字では不満な人が多いかもしれませんね。〈オチ書かれへんやん〉とか言っている人が多そうです。だから240文字くらい喋られる大阪版Twitter〈ツイたるねん〉を作れば関西圏で大ヒットすると思うのですが、皆さん、どうでしょうか?
すいません、アホな話をして。僕の〈ギタリスト100選〉は古い人ばかりなんですけど、現役で確実に上位に入るのが、このカサビアンのギタリスト、サージ(・ピッツォーノ)なことは間違いないですね。ノエル・ギャラガー、アレックス・ターナーより上、ジョニー・マー、ジョン・スクワイアの下って感じですね。あのキリストみたいな顔で弾く姿、最高にかっこ良いでしょう。
ちょこちょことしか弾かない感じがするんですが、すごいツボを突いた音を出していますよね。〈なんじゃこの音、どんなエフェクター使ってるの?〉という時も多いですよね。あと、いまも同じギターか知りませんが、リッケンバッカー481を使っているのも渋いすよね。このギター使っている人、あんまりいません。ベースだとこの形は定番なんですけど。このギター、フレットが斜めになっているんですよね。それにどういう効果があるのか弾いたことないんでわかんないですけど、人がやってないことをやるというのは、趣味人としては最高の領域です。
そんなサージが、カサビアンの4枚目のニュー・アルバム『Velociraptor!』の共同プロデューサーですよ。悪いがわけない。
有史以来もっとも凶暴な生物と言われ、仲間と共に恐竜の王者・ティラノサウルスを倒すことができたという説もあるヴェロキラプトルという名前、凄くカサビアンぽいですよね。これだけで、カサビアンが今作にどれだけ自信があるのか窺えます。
まず、シングルとしてリリースされた“Days Are Forgotten”からヤバかったですよね。アークティックなハードなリフにスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンなコーラスが絡むという、ありえないマッシュアップ。しかし、誰もが〈これがカサビアンの新作か!〉と叫んでしまうかっこ良さ。
アークティック・モンキーズの名前を出しましたが、彼らがUSのバンド以外でいちばん好きだったのが、カサビアンなんですよね。もともと自分たちの音なのに、弟分に自分たちの音の特長を取られた部分もあるんだと思いますが、完全にこっちが本家本元だと証明してますね。
そして、アークティックよりもヤバい、サイケな感じが本当に最高です。本人たちも〈俺たちはメジャーなバンドのなかでいちばんアヴァンギャルドだ〉と言ってますが、まさにその通りです。ホント、いろんなところで〈なんじゃこれは〉とツッコんでしまいます。
カサビアンの魅力を知っている人はもうわかっていると思いますが、そんな世界一アヴァンギャルドなバンドであるうえで、彼らには最高のメロディーとポップセンスがあるんですよね。これが不思議で仕方がない。なんでそんなことができるの? 天性としか言いようがない。ビートルズといっしょですよ。ビートルズもアヴァンギャルドでヤバい曲ありますけど、どこかポップな香りが漂ってくるのと同じです。
カサビアンをまだ知らない人が絶対聴いてみてください。カサビアンはライヴも良いんで、ライヴDVD付きのデラックス盤をお薦めします。満足すること間違いないですよ。