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【第2回】――マーヴィン・ゲイ

連載
ハマ・オカモトの自由時間
公開
2011/10/21   20:00
更新
2011/10/21   20:00
ソース
bounce336号 (2011年9月25発行号)
テキスト
構成/編集部

ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル〜ファンクを自由に紹介する連載!

 

【今月の課題盤】 MARVIN GAYE 『What's Going On』 Motown (1971)

マーヴィン・ゲイのアルバムのなかでも名作と言われる『What's Going On』。これは音楽史的にもモータウン史的にもかなり革命的な作品ということで、紹介したいと思います。まずはモータウンから説明したほうがいいですか? でも語りはじめると長くなるので……詳しくは自習してください! とはいえ簡単に言うと、59年に設立されたソウル・ミュージックを語るうえで外せないレーベルであり、全世界のミュージシャンが影響されているであろう、ポップ・ミュージックの大元と言えます。モータウンを知らなくても耳にしたことがない人はいないほど有名な曲を多く発表しています。僕らの“おやすみ君のこと”は〈モータウン直系〉なんて言われたり、ジャンル名みたいにもなっていますね。

で、モータウンの初期作品は基本的にファンク・ブラザーズと呼ばれた人たちが演奏していたのですが、『What's Going On』まではどの楽曲にもクレジットされていません。レーベル主導で楽曲が作られて、演者には自由がなかったんです。そんなやり方に反発したマーヴィンが自身でプロデュースをして、演奏家の名前を初めてクレジットしたのがこの作品です(もちろんそれ以外にもコンセプトはありましたが……)。派手さはないし、歌詞は社会的なメッセージ性があったり、かなりテーマが重くて、ハッピーなサウンドやベタなラヴソングが多いモータウンには珍しいものでした。

あとベーシスト的に言うと、伝説のプレイヤーであるジェイムズ・ジェマーソンの名演中の名演が聴けるのもこれ。噂によると、ジェマーソンは座っていられないほど酔っ払っていたのに、マーヴィンに〈お前じゃないと!〉と無理やり連れて行かれて寝ながら弾いたらしい(笑)。この人のプレイは〈生きてる〉っていうか、生モノなフレーズがすごくあるんですよね。初めて聴いた時にはそこまでわからなかったんですけど、いろんな音楽を聴いていくなかでその凄さに気付くようになりました。正確さはないのに、ベースだけで1曲出来るくらいバンドのグルーヴになってる。そういう視点でもおもしろいです。ちなみに、個人的にはデトロイト・ミックス(いわゆる初版)も興味深いんですよ。最近出たこのアルバムの〈40周年エディション〉ではLP盤にしか入っていないのですが、〈30周年エディション〉はCDにそれが収録されているのでオススメです。通常ヴァージョンはその初版の1か月後にミックスし直されたものですが、声の大きさとか楽器の振り方が全然違う。ミックスするうえでのコンセプトの違いがわかるので、その聴き比べも楽しいと思いますよ!

 

PROFILE/ハマ・オカモト

OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新作『欲望』(ARIOLA JAPAN)が好評リリース中。本作を引っ提げたツアーで全国各地を絶賛奔走中です。他にも各種イヴェントへの出演も予定されているので、詳しくはオフィシャルサイトへGo!