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おとぎ話 『BIG BANG ATTACK』

連載
SPOTLIGHT!
公開
2011/11/10   15:30
更新
2011/11/10   15:30
ソース
bounce 337号(2011年10月25日発行号)
テキスト
文/宮本英夫


こんな時代だからこそ……起こせ、BIG BANG!!



おとぎ話_A



前作に続きROSEからのリリースとなる新作『BIG BANG ATTACK』。ミックス&マスタリングを担当した曽我部恵一との相性は抜群で、シンプルなリフと流麗なメロディーを持つフォーク・ロック的な楽曲の魅力を壊さず、時にサイケデリックに、ニューウェイヴィーに、プログレッシヴに衣替えさせ、万華鏡を思わせるめくるめく音世界を作り上げた手腕はお見事だ。もともとソングライター・有馬和樹の才能は尋常ではなく、ビートルズ以降のメロディー重視な洋楽ロックの王道を押さえたうえで、同時代に聴いたグランジやオルタナ、日本ではGOING STEADYなどからの影響も消化した曲作りの巧さは、デビュー当時から光っていた。

その後はプロデューサーを付けてアレンジに凝ったり、一発録りに回帰したりしていたが、この5枚目のアルバムには迷いが一切感じられず、実に素晴しい。〈宇宙〉をテーマにしたというコンセプト作で、UFOに乗って理想の未来へ旅立つ“未来の乗り物”を皮切りに、SFっぽい設定の楽しい楽曲が並ぶが、一人の人に向けた愛、音楽への愛、自分の人生への愛など、テーマを突き詰めれば〈愛こそはすべて〉に行き着く。つまりビートルズが歌った世界観をいまも歌っているわけだが、それが凡庸な標語にならず、熱い感動を持って迫ってくるのは、〈音楽には革命を起こす力がある〉という強烈な信念が彼らの創作の源にあるからに他ならない。古い?――いや、こんな時代だからこそ聴かれるべきバンド、おとぎ話。機は熟した。


▼関連盤を紹介。

左から、おとぎ話の2010年作『HOKORI』(ROSE)、おとぎ話が参加した2010年のはっぴいえんどのカヴァー集『はっぴいえんど 『CITY』 COVER BOOK(1983-2010)』(KNZ×LR2)