こんな時代だからこそ……起こせ、BIG BANG!!
前作に続きROSEからのリリースとなる新作『BIG BANG ATTACK』。ミックス&マスタリングを担当した曽我部恵一との相性は抜群で、シンプルなリフと流麗なメロディーを持つフォーク・ロック的な楽曲の魅力を壊さず、時にサイケデリックに、ニューウェイヴィーに、プログレッシヴに衣替えさせ、万華鏡を思わせるめくるめく音世界を作り上げた手腕はお見事だ。もともとソングライター・有馬和樹の才能は尋常ではなく、ビートルズ以降のメロディー重視な洋楽ロックの王道を押さえたうえで、同時代に聴いたグランジやオルタナ、日本ではGOING STEADYなどからの影響も消化した曲作りの巧さは、デビュー当時から光っていた。
その後はプロデューサーを付けてアレンジに凝ったり、一発録りに回帰したりしていたが、この5枚目のアルバムには迷いが一切感じられず、実に素晴しい。〈宇宙〉をテーマにしたというコンセプト作で、UFOに乗って理想の未来へ旅立つ“未来の乗り物”を皮切りに、SFっぽい設定の楽しい楽曲が並ぶが、一人の人に向けた愛、音楽への愛、自分の人生への愛など、テーマを突き詰めれば〈愛こそはすべて〉に行き着く。つまりビートルズが歌った世界観をいまも歌っているわけだが、それが凡庸な標語にならず、熱い感動を持って迫ってくるのは、〈音楽には革命を起こす力がある〉という強烈な信念が彼らの創作の源にあるからに他ならない。古い?――いや、こんな時代だからこそ聴かれるべきバンド、おとぎ話。機は熟した。
▼関連盤を紹介。
左から、おとぎ話の2010年作『HOKORI』(ROSE)、おとぎ話が参加した2010年のはっぴいえんどのカヴァー集『はっぴいえんど 『CITY』 COVER BOOK(1983-2010)』(KNZ×LR2)