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ロックが何かを知りたいなら、エアロスミスを聴け!!

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2011/11/16   17:59
更新
2011/11/16   17:59
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文/久保憲司


ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、7年ぶりの来日公演がいよいよ間近に迫ったエアロスミスの名作『Rocks』について。70年代のアメリカン・ロックの格好良さを知りたいなら、聴き逃し厳禁のアルバムで――。



僕が子供の頃、いちばんかっこいいロック・バンドと言えばエアロスミスだった。もう35年以上前の話ですけど。77年の彼らの初来日公演は、僕はもうパンクが好きだったから建前上、観に行かなかったんですけど、本当は観に行きたかったです。 

何回も書いてしまいますが、その頃でいちばんかっこいいバンドと言えば、エアロスミスだったのです。とにかくギタリストのジョー・ペリーがかっこよかった。トーキング・モジュレーターを口に加えたり、BCリッチの10弦のギターや左利き用のストラトを右で弾いたりとか、本当にかっこよかったのです。ロックしている頃のジェフ・ベックな感じをジョー・ペリーは受け継いでいたんです。いや、もっとかっこよかったかな。

〈初来日公演パンフ〉〈初来日公演チケット〉〈初来日公演告知ポスター〉などがついた『Rocks』の35周年記念エディションが欲しいです。このエディションは少し値段が高いから、すべての人にはお薦めできないですけど、『Rocks』はぜひ聴いてほしいです。アメリカン・ロックの頂点というか、ブリテイッシュ・ロックが行き着いたアルバムと言ってもいいんじゃないでしょうか。

そして、実は結構ドボドボのアルバムなんですけどね。凄いドラッギーなんです。でも、それがいま思うとかっこいいなと思うのです。このアルバムが爆発的に売れたからドラッギーになったのか、この前からドラッギーなのかちょっとわかんないですけど、確かなのはこのアルバムをリリースした1年後の日本ツアーの記憶が、本人たちには一切ないそうなんです。

ジョー・ペリーが6弦ベースを弾く1曲目の“Back In The Saddle”からむちゃくちゃヘヴィーでファンキーでかっこいいです。かっこいい、かっこいいばっかりですいません。でも他に何が言えるかって、この曲を聴いてもらえばわかると思います。でも、どうしてこの曲がヘヴィーでかっこいいのか、やっぱりわからないんですよね。ギターをヘヴィーにした6弦ベースが入っているからドラッギーでヘヴィーなのか、解明したいんですけど、わかりません。

2曲目の“Last Child”はエアロお得意のバラードかと思わせるイントロに始まり、エアロがいちばん影響を受けている『Abbey Road』期のビートルズのようなヤバいコーラスが入って、どうなるかと思えば、エアロお得意のファンキーなグルーヴになるという。こんな曲、誰も作れないすよ。

3曲目はのちのLAメタルに繋がっていくスピーディーなロックンロール・ナンバー“Rats In The Cellar”。そして、1曲おいてビートルズ“Tomorrow Never Knows”などのサイケ時代のあの感じを完全にエアロ節に変えた名曲“Sick As A Dog”。70年代のアメリカン・ロックのかっこよさを知ってもらうためには、ぜひとも聴いてもらいたいアルバムです。

このアルバム以外にも、エアロスミスの名曲が散りばめられているベスト盤『Aerosmith's Greatest Hits 1973-1988』や、あと彼らはライヴもかっこいいので名ライヴ盤『Live! Bootleg』もお薦めです。

そして、いまのライヴも凄くいいんですよ。ドラッグで落ち込んだかもしれませんが、復活してからは、ずっと70年代の黄金期のライヴの感じをずっと続けているんですよね。ストーンズもそうかもしれないですけど、エアロスミスはドラッグでいちばんテンションが高かった頃の感じを、クリーンな状態で、いまもやっているのが本当に凄いなと思います。これこそロックだなと思ってしまうんです。ロックって何だろうって知りたい人は、エアロスミスを絶対チェックしてください。