映画界でもロックンロールは鳴り止まないっ! 彼らの音楽を通じて若者の光と影を描いた傑作
今年初めにメジャー・デビューを果たし、まだまだ勢いの止まらない神聖かまってちゃん。その活躍(と騒動)のなかでも、特にインパクトを残したのが映画「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」のヒットだろう。監督は〈SRサイタマノラッパー〉シリーズが高く評価された入江悠。ノリにノッている両者がクロスしたこの作品が、今回DVD化された!
もっとも、これはバンドのドキュメンタリーではない。冒頭こそかまってちゃんのライヴ映像だが、それ以降は劇映画、しかも群像劇だ。中心となるのはプロ棋士をめざす女子高生・美知子(二階堂ふみ)、シングルマザーのポールダンサー・かおり(森下くるみ)、そして神聖かまってちゃんのマネージャー・ツルギ幹人(演じるのは、本当にかまってちゃんのマネージャー・劔樹人!)。彼女たちは夢や目標を胸に、日々の生活や仕事で困難に直面しながらさまざまな状況でかまってちゃんの楽曲に触れる。その人物の心情と曲調をシンクロさせる演出が巧みだ。そして3人の物語は、終盤のかまってちゃんのライヴへ向けて加速。会場で、動画配信サイトで、CDで――バンドの鳴らす音がそれぞれの人物に波及していく。ハイライトとなった“ロックンロールは鳴り止まないっ”の演奏シーンには、物語のクライマックスに相応しい圧倒的なパワーがある。この場面が持つ爆発力を、物語上のブレイクスルーに重ねた入江監督の采配は実に見事!
音楽を楽しむツールが多様化する現状を踏まえ、人と音楽の変わらぬ関係性を描いたとも言えるこの映画は、2011年に生まれるべくして生まれた傑作だ。
▼神聖かまってちゃんの作品を紹介。
左から、2010年作『友だちを殺してまで。』、同『みんな死ね』(共にPERFECT)、同『つまんね』、2011年作『8月32日へ』(共にワーナー)