精力的に動き回るルーク・ヴァイバートの〈新作〉は……プラグにチューン・イン!
90年代の中頃、ジャングルにテクノ方面から緻密なプログラミング技術を持ち込み、痙攣するようなビートや奇天烈なサンプリングでクラブ・シーンに衝撃を与えた〈ドリルンベース〉。当時はドラムンベースに代わる新しい音楽として持て囃されたものですが、それをリードしたのがエイフェックス・ツイン、マイク・パラディナス、そしてルーク・ヴァイバートらの〈コーンウォール一派〉。特にルークがプラグ名義でリリースした作品の数々が後のシーンに及ぼした影響は計り知れず、あのスクエアプッシャーも感化されたほど! でもなぜ、いまプラグの新作『Back On Time』が登場したのでしょうか?
今回の作品は、ニンジャ・チューンのオフィスを訪れたルークが偶然発見した当時のDATテープが元だそう。ゾンビーがレイヴの感覚を呼び起こし、スクリームがオールド・スクールなジャングルをリリースし、ビョークもジャングルを聴かせるなど、90年代のDNAに触れる機会が増えた昨今だからこそ、ドンピシャなタイミングなのです。それを実証するように、ジャングル/ドラムンベースの新作として聴けるぐらい古臭さは皆無なのですよ! ワゴン・クライストやルーク・ヴァイバート名義の作品で彼を知った人には驚きのスタイルかもしれませんが、ファンクやソウルなどブラック・ミュージックの要素を滲ませたサンプリング使いや、巧みなプログラミングの裏に忍ばせたユーモアからは、昔もいまも変わることのないルークらしさを発見でき、とても意義のある作品だと言えそうです。
▼プラグのニュー・アルバム『Back On Time』(Ninja Tune/BEAT)
▼関連盤を紹介。
左から、プラグの96年作『Drum 'n' Bass For Papa』(Blue Angel)、ルーク・ヴァイバートの2009年作『We Hear You』(Planet Mu)、ワゴン・クライストの2011年作『Toomorrow』(Ninja Tune)