ロック史における重要人物たちの名を冠した新世界で鳴り響く音とは?
1位にジョン・レノン、2位にエルヴィス・プレスリー、3位がフレディ・マーキュリーで4位にジミ・ヘンドリックス、5位はジャニス・ジョプリン……先日の新聞で見た〈もう1度見たい早世したロッカー〉アンケートの結果だ。エイミー・ワインハウスは12位、エリオット・スミスに至っては19位。上位陣は、おそらく20年前に同様のアンケートを募ったとしてもほぼ同じだろう。
その死によって伝説化したミュージシャンの根強い人気に改めて感服するが、でもそれだけじゃないよ、とも思う。〈過去の破滅的なロック・アーティストたち〉に関する(ある種)保守的な記事もいいけど、他に目を向ければ、そういった先達に憧れてその領域に近付こうとする〈未知の可能性〉も当然たくさんある。このブライアン新世界も、そんな男だ
ただし、彼はその先達(が作った音楽)と自己を同一化しようとはしない……いや、名前こそ〈ロック史における重要なファースト・ネーム〉である〈ブライアン〉を冠してはいるが、その強烈なオリジナリティーとユーモアこそが彼の表現の核であり、そのパンチ力こそ、彼を〈閃光ライオット〉にてファイナリストに押し上げた要因だ。
このデビュー・ミニ・アルバムの冒頭を飾る“LOW-HIGH-BOOTS(自宅DEMO)”。まずは、この曲を宅録で構築した執念とDTM技術に驚く。多重録音のコーラスを入れたド派手なオペラ調のロック組曲にクイーン“Bohemian Rhapsody”を連想したりもするが(本人のTwitterによると、実際はスパークスやハノイ・ロックスのアンディ・マッコイ、ミート・ローフの影響下にあるそう)、シンセやピアノ、ハード・ロッキンなギターなどが目まぐるしく入れ替わる情報量の多さは、むしろ電波系アニソンにも通じる〈おもしろいからいろいろやってみよう〉的な、豊かなアイデアに裏打ちされたものではないか、と思う。また、Twitterを通してファンと丁重に交流する彼らしく(?)、歌詞にも〈つぶやきがもう止まらない〉といったイマっぽいトピックを入れたりと、全体に見事な換骨奪胎ぶりだ。
2曲目以降も、ビリー・ジョエル風のピアノ・ロック“月光ロッカー”や、己のコミュニケーション能力について考察する“ロンリー論理に打ち勝て!”、ピアノとストリングスに乗せて人と人の繋がりを謳う“つながり愛”、影山ヒロノブや水木一郎が歌ってもおかしくない、特撮ヒーロー番組の主題歌みたいな“Burning my Fire!”と、濃厚な楽曲が並ぶ。ロックって形が決まってるもんじゃない、人と似たようなことだけやってどうする? ――本作からは、そんな彼の主張が聴こえてくる。音楽的な振り幅や自由度の高さと、その制作スタイルやリスナーとのコミュニケーション方法。それらすべてに込められた熱量が、〈ブライアン新世界〉という名の示しているものだと思う。