ビッグ・アーティストたちが信頼を寄せる、熱を帯びた歌声
学生時代から地元・神戸のジャズ・クァルテットやゴスペル・チームで天性のフィーリングを磨き、高校卒業後はバークリー音楽大学に進学。卒業後はチャカ・カーン、ダイアナ・ロス、LLクールJをはじめ、ライヴやレコーディングの現場で数多くの国内外アーティストを〈バック・ヴォーカル〉としてサポートしてきたシンガー、YURI。前述のアーティストたちの顔ぶれを見ていただいただけでも、彼女の力量がどれほどのものかおわかりでしょう。そんな彼女のバイオグラフィーを眺めがら、DC・リー(ワム!やスタイル・カウンシルのバッキングで参加していたUKのシンガー)とか思い出しつつファースト・アルバム『LoveRespectHarmony』をリスニングしていたらば、久保田利伸ご本人を迎えてのカヴァー“GODDESS ~新しい女神~”がことのほかUKソウルなテイストで耳をくすぐってきたものだから、たまらず……という私的な話はさておき。
『LoveRespectHarmony』に収録されている楽曲は、彼女がこれまでに関わってきた面々の楽曲を英語詞でカヴァーしたもの+オリジナル1曲で構成されていて、うち4曲では久保田利伸、トータス松本、JUJU、AIといったオリジナル・アーティストと共演。トータス松本とファンキーな掛け合いを聴かせる“クリア!”を皮切りに、メランコリックなミディアム・チューン“The Perfect Vision”(原曲はMINMI)、AIと共演したR&Bバラード“My Friend”、JUJUとの神聖なピアノ・バラード“奇跡を望むなら...”。さらにはアコースティック・アレンジを施したDREAMS COME TRUE“LOVE LOVE LOVE”、ギターがリードするエネルギッシュなファンク・ナンバー“YOU GOT THE LOVE”(原曲はルーファス&チャカ・カーン)、唯一のオリジナル曲となったゴスペル調バラード“IF”などなど、歌への〈熱の加え方〉がホント絶妙で、熱すぎず冷めすぎず、強すぎず優しすぎずな感覚が彼女のヴォーカルの持つ人懐っこさの要因なんだろうな、と。そんなことを思いながらうっとりしてしまうこと請け合いな一枚だと言えるでしょう。
このアルバムを通じて〈自分だから歌える歌〉〈自分にしか歌えない歌〉を伝えていきたいと語る彼女ですが、伝えたいのは〈自分〉のことではなくて〈歌〉──有言実行できているシンガーって、そうはいません。