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『人形浄瑠璃文楽名演集 通し狂言 妹背山婦女庭訓』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/01/17   17:37
ソース
intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)
テキスト
text:鈴木智彦(タワーレコード本社)

後世にまで伝えたい、世界に誇る文楽の世界をみんなで楽しもう!

07年に出版された文楽に関する三浦しをんのエッセー本『あやつられ文楽鑑』、文楽を題材とした小説『仏果を得ず』の出版あたりがきっかけなのかどうか? 文楽公演のチケットは現在とても人気があって手に入れるのが大変。しかも、大阪の「国立文楽劇場」と東京の「国立演芸場」、四国「内子座」など限られた劇場で限定期間に行われる公演につき、三浦しをんのエッセーや小説を読んで文楽に興味を持ったというような超初心者(僕のような、です)にはクリアしなければならない難関がいくつもある。そこで有難いのが本シリーズ。NHKと国立劇場が協力して文楽の古典名作の数々を映像化(DVD化)する本シリーズの発売も今回が第4回目。これまで発売されて来た作品も含めここにご紹介しておこう。『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』、『仮名手本忠臣蔵』、そして今回発売『妹背山婦女庭訓』。文楽には過去の歴史から題材をとって制作された「時代物」と、その作品が制作された同時代の事を主題とした「世話物」の二通りがあるが本シリーズは全て時代物名作の映像化だ。 近松門左衛門という天才作者が書いた世話物のヒット作品によって江戸時代初期に人気が爆発、その後も近松に続く優れた作者が続々と登場し創作されて来た文楽の名作の数々。その本に文字通り生命を吹き込む「太夫(浄瑠璃語り)」、「三味線」、「人形遣い」たち。作者たちの鋭い感性、社会洞察、そして豊かな想像性と、演者たちのストイックなまでの修行と研ぎ澄まされた美意識が創り上げた総合大衆芸能。 国際連合教育科学文化機関ユネスコの 「世界無形遺産」に09年に真っ先に登録されたこの素晴らしい芸能の醍醐味を映像作品として記録、広く(僕のような超初心者まで含む)伝え、また後世にまで伝えて行ける本シリーズの意義はとても大きい(価格も、いろいろ総合して考えると高くないのでは? と思う)。こんなに面白いものを、一部マニアや三浦しをんファンだけに(!?)独占させておく手はないです。みんなで楽しみましょう!