ウィリー・ネルソンの「子供たち」によるカヴァーバンドが2作目をリリース
ノラ・ジョーンズが友人たちとカヴァー曲を気楽に演奏して楽しもうと始めたバンド、リトル・ウィリーズの6年ぶりの2作目。名前の由来が「元々はウィリー・ネルソンの曲だけをやるはずだった」ことにあるように、選曲はほとんどがカントリーの名曲で、クリス・クリストファソンの代表作を表題曲に、ウィリー、ジョニー・キャッシュ、ロレッタ・リン、ハンク・ウィリアムズのヒットなどが並んでいる。ウィリーが世代を超えて敬愛されるテキサスでノラは育ち、 その地のカントリーはジャズやスウィングの要素を含むので、このバンドの音楽性は彼女にとってごく自然なものでもあろう。
リチャード・ジュリアンは東部出身で南部人でないが、本作での歌唱はライル・ラヴェットにとてもよく似ている。あのカントリーからジャズまでを呑み込んだテキサス男を自分なりのカントリーへのアプローチの参考にしたようだ。そのおかげで、幕開けのスタンリー・ブラザーズの《アイ・ワーシップ・ユー》をはじめ、ノラとジュリアンは息のあったハーモニーを聞かせる。
彼らが何よりも惹かれているのはカントリーの名曲の持つシンプルな表現で興味深い物語と深い感情を伝えるソングライティングの語り口だ。ドリー・パートン のあまりに有名な(日本でだけはオリヴィア・ニュートン・ジョン版で知られる)《ジョリーン》のテンポを落として、ノラの官能性漂う歌声で歌った解釈は原曲の必死の懇願とは異なったもので、恋人(夫)を奪わないでとジョリーンに訴える主人公という設定の背後にもっとドラマがあるのではと行間を読ませる仕上がりとなっている。
また、トラック・ドライヴァー・ソングの《ディーゼル・スモーク、デンジャラス・カヴァーズ》やレフティ・フリゼルの代表曲でホンキートンク・カントリーの古典《お金があればね》などは、その「いなたさ」を逆手にとって、楽しんで料理できる素材でもあり、そこではテレキャスターの名手ジム・カンビロンゴのトワンギーなギター演奏が活躍している。