昨年のミックスCDで印象的だったのは、STUDIO APARTMENTの森田昌典が主宰レーベルのApt.から放った『TOKYO HOUSE UNDERGROUND』だった。SAの新曲“Hide Out”収録もトピックでありつつ、ロバッグ・ルーメで始まってヨリス・ヴォーンでシメるディープにして硬質な流れは、ともすればオシャレ系に見られがちなSAのイメージを改めさせるに十分なものだったはずだ。それを前提に『にほんのうた』を聴くと、Apt.というベースがあるからこそ、新たな冒険に針を振り切れたのだということもよくわかる。
テキそのApt.はかねてから日本産ハウスの信頼できるブランドであり続けてきた。あのDAISHI DANCEをデビューに導いたのもこのレーベルだし、他にもPAX JAPONICA GROOVEやFloor on the Intelligence(agehaspringsの田中隼人)らの作品をリリース。Apt.の層の厚さは2000年代半ばに訪れたハウス・ブームを牽引することにもなったものだ。
さらにApt. Internationalという部門では、海外での評価が先駆けていたHIDEO KOBAYASHIの作品を日本でリリースしたり、同じくデニス・フェラーやティミー・レジスフォード、ケリ・チャンドラーといった海外の大物のライセンスも行っている。こうしたハウスの番人的な役割もSAが背負う重要な一面なのだ。
▼文中に登場したアーティストの関連盤を紹介。
左から、2011年のミックスCD『TOKYO HOUSE UNDERGROUND mixed by MASANORI MORITA』、DAISHI DANCEの2006年作『the P.I.A.N.O. set』、PAX JAPONICA GROOVEの2008年作『PAX JAPONICA GROOVE』(すべてApt./NEW WORLD)、Hideo Kobayashiの2011年作『patissier』、デニス・フェラーの2006年作『The World As I See It』、ティミー・レジスフォードの2010年作『At The Club』、ケリ・チャンドラーの2008年作『Computer Game』(すべてApt. International)