J*** or BAM ?
2011年11月28日にトランペット奏者ニコラス・ペイトンが、自身のブログにアップした投稿『Why jazz isn't cool anymore』が大きな波紋を呼び起こしています。数ヶ月たった現在もなお、ソーシャル・ネットワークサイトなどで、日夜、激論が繰り広げられています。
古くは1950年代にマックス・ローチやチャールズ・ミンガスらが異を唱えたように、ニコラスやその賛同者たちは、「Jazz」 という呼び方に異を唱えています。
音楽産業のマーケティングのために「Jazz」というレッテルを与えられた音楽が、アメリカのポピュラー音楽の流れのなかで隔離され、死に絶えつつある。そのルーツを辿れば、ニューオーリンズに端を発したブラック・アメリカン・ミュージック(BAM)であり、その起源を認知し、システムの中に無自覚に潜在する人種差別的・植民地主義的環境を改善し、このアート・フォームを再生させようという一種のムーヴメントに成りつつあります。
黒人文化が生み出したアートフォームであることを重々理解しつつも、 「Black」という箇所に多くの人々が様々なリアクションを起こしています。「BAM」は、その起源こそ黒人文化に発してはいるものの、すべての人種のものであり、決して排他的なものではないことを、彼らは力説しています。
ニコラス・ペイトンの新作『Bitches』は、彼自身初のクロスオーバーな「BAM」作品です。カサンドラ・ウィルソンやエスペランザ・スポルディングら女性ヴォーカル陣をゲストに迎え、ニコラス自身が全楽器を操り制作されたポスト・Jディラなトラック、いつもながらにソウルフルなトランペットに加え、初めて披露された彼のバリトンヴォーカルもたっぷり楽しめます。
音楽の作り手の感覚は、近年ますます多様化しています。それは、自分も含め、音楽の受け手の側も同じような気がします。ジャズ・フェスやジャズ・クラブの出演者を見ても、タワーレコードのジャズ・コーナーで試聴しても、私たちは、ふと考えます。
「これって、ジャズ?」