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Wes Montgomery 『Echoes Of Indiana Avenue』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/03/07   19:18
ソース
intoxicate vol.96(2012年2月20日発行号)
テキスト
text : 常盤武彦

メジャー・デヴュー前夜の姿をとらえた貴重なドキュメント

ジャズ・ギターの革新者、ウェス・モンゴメリーのメジャー・デビュー前夜を捉えた、貴重な音源が発掘された。1957年から1958年にかけて、故郷のインディアナポリスでの2つのクラブ・ギグとスタジオ・セッションを収録している。この未発表テープは録音後、数人の手に渡り、ギタリストでウェスファンのジム・グリーニンジャーが1990年に入手した。テープのコンディションが悪かったためデジタル化し、レコード会社に売り込んだが、2008年まで契約はまとまらなかった。グリーニンジャーはe-Bayに出品しつつ、未発表音源の発掘王でも知られるプロデューサー、マイケル・カスクーナと連絡を取る。カスクーナは、この音源の希少価値を見抜き、旧知のレゾナンス・レコードのジョージ・クラビンと、ゼヴ・フェルドマンに推薦した。ウェスが演奏している以外は、パーソネル、クラブ情報が一切不明だったのだが、フェルドマンの生存する関係者、ミュージシャンへのインタヴューから、レコーディングの詳細が明らかになった。《Straight No Chaser》のみが、モンク(b)、バディ(P)のモンゴメリー・ブラザースとの競演。4曲は、インディアナポリスのアフリカ系居住区の中心で、20以上のジャズ・クラブが軒を連ねていたインディアナ・アヴェニューにあったThe Hub Bubで録音されている。メジャー・デビュー後も行動を共にするメルヴィン・ライン(P,org)を中心とした、ローカル・ミュージシャンの熱演を聴ける。当時のインディアナポリス、アメリカの地方都市のジャズ・シーンの活況とレベルの高さをうかがい知れる、貴重なドキュメントだ。ビバップ・スタイルのスタンダードが中心だが、エンディングの《After Hours Blues》は、ウェスの即興のストレートなブルースと、今まで聴くことがなかった音源が収録され、そのルーツを再認識した。多くの未発表写真を掲載したブックレットも魅力である。

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