ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、ロックもロールも知っている22-20sのニュー・アルバム『Got It If You Want It』について。掻き鳴らされたワンコードに合わせて、僕たちは奇声を上げながら踊るだけで――。
22-20sやアンサーのように、ギターをアンプに直結したバンドに弱いです。そこにちょっとリヴァーブかかっていたら、最高じゃないですか! ロックにそれ以外の何が必要か、と思っています。
しかも、22-20sのファースト・アルバム『22-20s』の1曲目“Devil in Me”みたいなほとんどワンコードの曲を聴くと痺れてしまいます。ロックンロールやブルースなんて、所詮ダンス・ミュージックなんだから、細かいことは踊るのにめんどくさいだけです。男は黙って、ワンコードです。
Aのコードを掻き鳴らして、自分の思いを吐き出すだけ。それ以外に何が要るという話です。その魂に合わせて、僕たちは奇声を上げながら、踊るだけです。
ブルースですよね。22-20sというのはスキップ・ジェイムス“22-20 Blues”から取られているんです。ピアノ・ブルースの名曲。元ネタはロバート・ジョンソンの“32-20 Blues”です。〈俺は32-20のウィンチェスター銃を持っているんだけど、俺の彼女のアソコは38口径スペシャルなんだ〉という歌です。すいません、下ネタで。22-20という銃はないんですけどね。こっちのほうが語呂がいいですよね。
22-20sの3作目『Got It If You Want It』の1曲目“Bring It Home”や2曲目“Pocketful Of Fire”もまさにそんな曲です。ほとんどBやAで一発の曲。サビでコード展開があるけど、そんなの惰性みたいなもの。これこそロックンロールです。
アークティック・モンキーズなんかもまさにこの世界ですよね。本当、わかっている奴はわかっているという感じです。
そして、22-20sの新作は、アークティック・モンキーズのようにヘヴィーでサイケになっていっているのもいいです。よくわかっているなと思います。ロックンロールと、ブルースと、サイケがあったらもう他に何も要りません。後はファンクくらいかな。ヒップホップがあってもいいけど、でも、テクノもハウスもみんなロックンロールやブルースの兄弟じゃん。このへんの感じ、みんなにわかってもらいたいな。一体自分たちは何に感動しているのか、ビートだよ。思想とか、電気な音とかそういったことは味付けでしかない。キース・リチャーズの名言ですよ。
「近頃の若い奴らはロックは知っているけど、ロールを知らない」。
だから、僕はみんなに22-20sを薦めるのだ。
22-20sの格好良さはガイ・リッチーの映画「ロックンローラー」で使われているから、わかってもらえる人もいると思うんですけど、何と、いま20-20sは本国UKでのレーベル契約がないんですよね。どうなっているねん!という感じです。
みんなで22-20sを応援しましょう。来日もします。何もかも忘れて、叫びに踊りに行こうぜ。