意志を持った戦慄のミニマル・ビート
メタル・ボックス仕様がPIL『Metal Box』へのオマージュかどうか定かではないが、そうした先達にも比肩する不穏なムードは、2年半ぶりとなるニュー・アルバム『DESINTEGRATION』にも引き継がれている。だが、ひたすら進化の一途を辿っている音楽性は、いよいよ未踏の領域へと足を踏み入れたようだ。
NY~ポスト・パンク、ノーウェイヴ色が濃厚に表出していた初作『YOLZ IN THE SKY』に続いた2作目『IONIZATION』では、無表情に刻むハンマー・ビートで一気にクラウト・ロック~ミニマル・テクノへと舵を切ったYOLZ IN THE SKY。その後、ベーシストの脱退を経験した彼らだが、バンドはひとつ減ったピースを埋めることはせず、むしろ徹底的に削ぎ落とす方向へと向かっている。
3曲で40分以上というフル・ヴォリュームで、それらのノンストップ・ミックス・ヴァージョンを収めたDisc-2も付属。前作に引き続き、共同プロデューサーとしてPANICSMILEの吉田肇を招いた本作を一聴して気付くのは、音響面の大幅な強化だ。アナログ・シンセ然としたエフェクトをはじめ、常軌を逸した音のヴァリエーションを前作から披露しはじめた柴田健太郎のギターは今回、ダブ処理が多く施されているうえにリフも刻々と変化。エレクトリックな質感のドラム(だけど人力)が果てしない反復運動を繰り広げるなか、幾重にも折り重なるギターのフレーズ/音色が、無機質な骨組みに妖しくも美しいグラデーションを与えている。脳天を突き抜けるような萩原孝信のハイトーン・ヴォイスも、一連のメロディーを辿っているというよりは、ワンフレーズをアクセント的に放出していると言ったほうが近い。右/左のチャンネルから現れては消える音のレイヤーが生み出す、アンビエントな揺らぎ――その向こう側で待ち構えているのは、仄暗いサイケデリアだ。
その底知れぬ闇のなかで渦巻いている空気が、なんとも言えず不気味だ。限りなくマシーンに近付いた人力のプレイは、冷徹無比なビートの狭間に得体の知れない意志のようなものを忍び込ませる。そうした異形のバンド・サウンドをより血肉化することによって、彼らはミニマル・ミュージックが根源に持つ前衛性を、途轍もなくトランシーなダンス・ミュージックへと変換することに成功しているのだ。
そんな今作のラストを飾るのは、不安と恍惚の間で聴き手を翻弄する22分の長尺曲“WAVER WAVER”。揺らめく音像のなかでじわじわとカタルシスを浮かび上がらせる同曲だが、エンディングの瞬間まで残されているのは、やはり淡々と脈動するビートだけ。そして聴き手は、さらにロング・セットのDisc-2へと導かれる。
本作に封じられているのは〈ミニマル〉に対するYOLZ IN THE SKYからの現時点における回答であり、それはつまり、終わりの見えない快楽である。その不敵なダンス・ビートに戦慄しながらも、私たちは取り憑かれたように踊り続けるのだ。