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『ティーンエイジ・パパラッチ レンズの向こうに見える、僕の未来』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/05/15   11:54
ソース
intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)
テキスト
text:細谷美香

セレブの世界に魅了されたひとりの少年の成長物語

TVドラマシリーズ『アントラージュ★俺たちのハリウッド』でブレイクし、映画『プラダを着た悪魔』ではヒロインの恋人を演じた俳優、エイドリアン・グレニアー。彼はパパラッチたちの存在にうんざりしていたある日、自分を追いかける集団のなかに13歳の少年、オースティンを発見する。少年に興味を持ったエイドリアンは、オースティンに関するドキュメンタリー制作をスタート。やがて美少年パパラッチとして有名になったオースティンは、今度は〈追いかける立場〉から〈追いかけられる立場〉になっていく……。

オースティンは、エイドリアンの目を引いたのも納得のガス・ヴァン・サント作品に出てくるような透明感あふれるキュートな男の子! そんな少年がいかつい大人たちにまざって昼夜セレブにカメラを向けるようになったのは、母親と一緒に行ったスパでパリス・ヒルトンと遭遇し、写真を撮ったことがきっかけなのだという。パリスとともにパパラッチのなかを並んで歩き、その非日常的な瞬間のとりこになったオースティンは、その日から美少年パパラッチとしてセレブを追いかけるようになったのだ。

エイドリアンはオースティンにカメラを向けながら、〈撮る側〉であるパパラッチはもちろん、マット・デイモンやエヴァ・ロンゴリア、ウーピー・ゴールドバーグ、リンジー・ローハンなどをはじめ〈撮られる側〉へのインタヴューも敢行。映画のために擬似デートをしたパリス・ヒルトンは「パパラッチは必要悪よ」と語り、意外にもクレバーな一面も見せている。

なぜ人々はセレブに惹かれるのか? セレブとパパラッチの終わりなき関係の行方は?

これは観る者にそんな問いを投げかけながら、現代のセレブリティ信仰の本質に迫ったドキュメンタリーであると同時に、セレブの世界に魅了されたひとりの少年の成長物語としても、複雑な後味を残す作品だ。