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【第9回】――ブッカーT&ザ・MG's

連載
ハマ・オカモトの自由時間
公開
2012/05/16   00:00
更新
2012/05/16   00:00
ソース
bounce343号 (2012年4月25発行号)
テキスト
構成/編集部


ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル〜ファンクを自由に紹介する連載!



【今月の課題盤】 BOOKER T. & THE M.G.'s 『Hip Hug-Her』 Stax/Atlantic (1967)

モータウンと並んで60年代に人気を誇った重要レーベル、スタックス。ウィルソン・ピケットやオーティス・レディングなど多くのレジェンドの作品を送り出したこのレーベルのハウス・バンドとして、また各々が作曲家としても活躍しながらオリジナル作を発表していた4人組、ブッカーT&ザ・MG'sを今回は紹介します。モータウンは基本ジャズの集団なので鍵盤はわりと生ピアノが多いんですが、スタックス及びMG'sはブッカーT・ジョーンズを中心としたオルガンがメイン。そういう意味では、いまでこそ両レーベルの音源が一括りになったコンピもありますけど、そもそも育ちが違う気がしますね。好みも結構分かれたんじゃないでしょうか?

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おしゃれ眼鏡ですが今回は盤がありません! バンザイ!!

僕はスタックスをMG'sから聴きはじめたので思い入れもあって、このグループは60年代にもかかわらず、黒人のブッカーTを筆頭に最初から黒人と白人が半々という人種混合の構成だったんですよね。黒人ドラマーのアル・ジャクソンJrに対する、白人のドナルド“ダック”ダンのベースがまたスゴイ。僕のベースはザ・フーのジョン・エントウィッスルを引き合いに出されることが多いんですが、実はダック・ダンからの影響が大きいんです。正直初期の頃は見た目がちょっと雑だったりするんですけど(笑)、プレジション・ベースを高い位置で弾く感じがカッコイイと思わせた最初の人だと思うんですよね。黒人は足が長くてスタイルもいいのでサマになるし、そもそも真似できない感じですけど、彼はそれとはまた違うカッコ良さがあるんです。メーカーは変わってますけど、いまでもプレベを使っていて、そういうブレないところも好き。むしろいまのほうがカッコイイんです。それから、ギターのスティーヴ・クロッパーもどう考えてもヘンで(笑)、抜きのプレイというか、全然弾かない! たまに弾いても、いわゆるコードをジャーンってやるんじゃなくて、単音で弾くんですよね。どこか浮雲さん(元・東京事変)と通じる気がします。

75年にドラマーのアルは亡くなりますが、遺された3人は現在も活動中。リーダーのブッカーTは昨年ルーツと組んだソロ作を発表しているし、近年もたびたびMG'sでライヴを行っています。2009年には〈フジロック〉に出演しましたね——あ、そういえば今回は盤をどうするか悩んで、普通なら初作の『Green Onions』でいいんですが、実はダック・ダン加入前の作品なんですよね(それを知った時はショックでした……)。それで、何よりあの女の人ありきのジャケがすごく好きという理由で『Hip Hug-Her』にしました(笑)。



PROFILE/ハマ・オカモト



OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新作『欲望』(ARIOLA JAPAN)が好評リリース中。5月3日は恵比寿リキッドルームでタワレコ主催の〈MAVERICK KITCHEN〉、5月5日は〈JAPAN JAM〉に出演! 詳しくは〈www.okamotos.net〉へGo!