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(第1回)韓国ミュージシャンの活力は……コレ!!

連載
長谷川陽平のソウルで勝手に生きてます。
公開
2012/06/07   13:30
更新
2012/06/07   13:30
テキスト
文/長谷川陽平


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チャン・ギハと顔たちでギタリスト/プロデューサーを務める唯一の日本人メンバー・長谷川陽平が、ソウルはホンデに集まるミュージシャンたちの生態に迫る新連載がスタート! 第1回は韓国のソウル・フード(ややこしい)と言える〈冷麺〉を巡るお話です。



皆さん、初めまして。長谷川陽平と申します。〈韓流〉という言葉ができるなど予想だにしなかった95年に初渡韓して以来、トゥゴウン・カムジャ(キムCが在籍)、サヌリム、ファン・シネ・バンドなどといったバンドで活動をしながら、気がつけばもう人生の3分の1近くをソウルで過ごしてきました。現在はチャン・ギハと顔たちのギタリスト兼プロデューサーというのが主な活動となっておりまして、今月よりこちらソウルから韓国インディー・シーン、そしてそのミュージシャンの生態を内側から暴いていくようなコラム(駄文)を書かせていただくことになりました……よろしくお願いします!



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ソウルにもバンドマンの生活中心区域がもちろんありまして、それが〈弘大(ホンデ)〉という街なのですが……まあ下北沢とか高円寺とか自由が丘とか代官山を鍋に入れて煮込んだようなところ(?)で、ライヴハウスの数も圧倒的に多く、最近はもう〈インディー・バンド=ホンデ・ミュージシャン〉的な図式が老若男女へ浸透するまでになりました。



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で、そのホンデ・ミュージシャンたちがフェイヴァリットに挙げる食べ物、まさに〈隠れた主食〉と言われるモノが……なんと〈冷麺〉なんです。日本の皆さんは冷し中華的な感覚で、〈冷麺なんて夏だけでしょ?〉とお思いでしょう……でもそれは違うんですよ!! 冬、オンドル(床暖房)の効いた暖かい部屋で食べる冷麺が最高の贅沢、なんて言う人もいるくらいですから。特に〈平壌式〉と言われる、蕎麦で作った麺&薄味ながら絶妙な味付けをされたスープから成る、とても素朴な冷麺がミュージシャンの間で大流行!! とあるバンドは、練習前に〈冷麺屋で会おう!〉とのメールで昼に冷麺屋へ集合、一杯サラッとたいらげた後にスタジオへ入り、練習終了後の片付け時にメンバーのひとりがボソッと〈……久々に冷麺食べたくない?〉という冗談だか本気だかわからん呟きに、〈ヨッシャ〉と一言、また同じ店に出向いたというーーいや、これは日常茶飯事なんですよ。実際、私も経験していますしね(笑)。

個人的にお気に入りの平壌式冷麺のお店は、〈ウルチ麺屋〉という、なんと工具市場(!)の中心にいきなりある老舗のお店であります。ここは韓流マダムたちもなかなか気付かないお店でありまして……。店内に入ると、いつも年配の方でごったがえしているんです。初老の方が真っ昼間から焼酎と冷麺ーーなんと焼酎をストレートで呑み、冷麺のスープをチェイサーにするんですよ!!——で一杯いっているという、〈極楽浄土的エアポケット〉が存在するわけです。で、そんな〈先輩方〉に混じって、ライダース・ジャケットを着たバンドマンたちが混在するという、これまたシュールな光景も見られるわけです。あ、ここで一言……冷麺に限らず、お客さんに年配の方が多い店は美味しい、という豆知識も付け加えておきます。

あともう一軒、ホンデからタクシーと地下鉄に乗って数分で行ける、まさに〈ホンデ・ミュージシャンの溜まり場〉的な平壌冷麺屋、〈ウルミルテ〉も紹介しましょう。ここは日本のガイドブックにも載っているので、訪れたことがある方もいらっしゃるかも知れませんね。実はここ、激しい打上げがあった次の日、二日酔いのミュージシャンの酔い覚ましに一役買っているワケでして……。太めの麺に肉の香りが強めのスープーーここを知らないホンデ・ミュージシャンはモグリだ、といっても過言ではないでしょう。もしかしたら、貴方の好きなミュージシャンに会えるかもしれませんねーーあ、でも二日酔い状態かも知れませんけど……(笑)。

さぁ、次回も〈ホンデ・ミュージシャンの生活の実態〉を暴きます!!



PROFILE/長谷川陽平



韓国のバンド、チャン・ギハと顔たちのギタリスト兼プロデューサー。95年に韓国へ移住し、トゥゴウン・カムジャやサヌリム、ファン・シネ・バンドなどで活動。現在は他にもミミ・シスターズや美男美女の〈美男〉ギタリストを務めたり、若手パンク・バンドのルック&リッスンのプロデュースなども手掛けている。重度の冷麺病。いつもここでつぶやいてます→twitter.com/#!/lghopper_yohei