金管五重奏で分厚く響くロックの名曲たち
さて原稿を依頼され、ブラス・エキストリーム・トウキョウとはどのような音作りをされる方々か? とネットを覗いてみたところ出てきたのが、ミニチュア電車が走るシーン。訝しげに音を聞いていると効果音が全てブラスではないか。この遊び心タップリな演奏に自然と音源を聴く期待が高まった。そして届いたのが今作『ロック・オブ・ブラス・クインテットVol.1&Vol.2』であった。
昨今のブラスでは珍しくもなくなった洋楽のカヴァーかと思いきや、そこは曽我部清典(tp)村田厚生(tb)等名手かつ一癖ある方々(失敬!)ならではの選曲とアレンジが光る。Vol.1冒頭に来るのが 《紫のけむり》ってのがまたニクい。弦楽四重奏でのシャープなアレンジでクラシックファンにも馴染みの名曲が、金管五重奏で分厚く響くのがこれまた強烈。
続いて登場はレッド・ツェッペリン屈指の名曲《移民の歌》。原曲のサイケデリックな響きを損なう事無く演奏できるそのテクニックも然る事ながら、より怪しさが増した音に仕上げるなんて聞いた事ありませんぜ。正直言って。
そして今2部作の集大成とも呼べるのが3曲目、そしてVol.2で組曲として収録されているプロブレ界を代表する傑作《タルカス》。最近では吉松隆氏が豪快極まりないオーケストラアレンジとして発表し話題を攫ったが、こちらはMIDI音源に初○ミクまで登場させるという破天荒極まりないアレンジがはっきり言って面白すぎ。……成程、この原稿がブラス担当じゃなくて現代担当に回された理由がよく分かったわ……ちなみに〈噴火〉はVol.1とVol.2でアレンジが異なっている。トコトンこだわって作成されているのが分かるというもの。アレンジがかなり強烈にも関わらず、これでもかと超絶テクを聞かせてくるので、ブラスファンの方々にも安心してお勧めできる。
〈音を楽しむ〉現代音楽として、普段こういうCDを聴かない人にこそ聴いてほしいCDかと。