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スティーヴン・スピルバーグ『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/07/02   14:09
ソース
intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)
テキスト
text:吉川明利(タワーレコード本社 )

ベルギーの人気コミック『タンタンの冒険』をスピルバーグが映画化!


タンタンの冒険

『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの伝説』から4年、スティーヴン・スピルバーグがピーター・ジャクソン(製作)とタッグを組んだ監督作品。老いたインディを映画化して 失敗したスピルバーグが、次に選んだ冒険野郎は、決して歳をとらないキャラクターだった。そう、漫画の主人公タンタンである。1929年に新聞漫画として 登場以来、ベルギー人エンジェの描く少年新聞記者と愛犬スノーウィは、ヨーロッパでは絶大な知名度を誇り、説明の必要がないほどの有名なキャラクター。ス ピルバーグは、その数々ある(福音館書店より24冊の翻訳出版がある)原作の中から「なぞのユニコーン号」を物語の主軸の題材として、自身初のモーショ ン・キャプチャー・アニメーション(この手法で大成功はスノーウィー。可愛い!)で映画化したのが本作である。

タンタンというキャラクターに馴染みのない日本人にとっては、まずは〈タンタンって何者?〉の紹介的な描写があってから、冒険がスタートしてほしいのだ が、オープニングからすぐに冒険が始まり、いささか呆気にとられる。これは原作を忠実に映画化したため仕方がないこと。また、原作ではユニコーン号の置物 を、タンタンがハドック船長へのプレゼントとして買い求め、船長は物語すぐに登場する。この映画としての上手いところは、そのハドック船長を原作初登場の 「金のはさみのカニ」を拝借して、話の中盤から登場させタンタンと一緒にバディとして冒険させるところだ。

映画の出だしに戸惑いはしたものの、そこはスピルバーグ。少年タンタンが銃を撃ちまって、一瞬「それってどうなの?」と思いはするが、活劇が走り始めれば CGアニメにしか出来ない大胆な動きのキャメラアングルを駆使して、観客を引っ張って気にならなくなるから不思議なもの。ラストの港でのクレーンを使った アクションは、まさにスピルバーグ演出の真骨頂。続編については、製作と監督を交代して、ピーター・ジャクソンが監督するとの噂。映画化すべき題材は数多 くあるだろうが、ここは『キング・コング』で見せたような、ジャングルを舞台にした冒険活劇を期待しよう!