レディオヘッドの背後には、実はペンデレツキがいた!
4年前にスティーヴ・ライヒと何度か話した時、突然、彼がこう切り出した。「映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は見たか? ジョニー・グリーンウッドのスコアが凄いぞ。まるでメシアンの影響を受けた現代作曲家だ」。すぐに映画館に観に行って、ライヒに観たと報告した。「良かっただろ? ロック畑の人の曲とは思えないよね。もとは《ポップコーン・スーパーヘット・レシーバー》っていう演奏会用作品なんだ。アマチュア無線の用語らしいんだけど、ギターピックでヴァイオリンとヴィオラのピツィカートを弾くなんて、普通は絶対思いつかない。才能のある人間は、ロックもクラシックも両方出来てしまうんだよ」。かくして昨年9月、ライヒとグリーンウッドはヴロツワフを訪れて演奏会を開催し、それと連動して作られたのがこのアルバムだ。しかもカップリングは、ペンデレツキ《広島の犠牲者に捧げる哀歌》と《ポリモルフィア》自作自演の新録音。こうして2人を並べて聴いてみると、グリーンウッドのピツィカートとペンデレツキのトーンクラスターが全く違和感なく共存してしまう事実に改めて驚いてしまうし、逆に言えば、半世紀前に〈ロック〉していたペンデレツキは、やっぱり偉大だったということにもなるだろう。もう1曲、グリーンウッドの演奏会用作品からは、よりペンデレツキの影響が濃厚な《「ポリモルフィア」への48のレスポンス(応唱)》も収録。最初に出てくるバッハ風のコラールがいかにも「大学で弦楽器やってました」的なお上品さを感じさせるが、最後はロックなリズムでお約束的に締め括り、グリーンウッドの面目躍如。それにしても、ノンサッチはライヒの仲介でこういうCDを作ってしまうんだから、相変わらず志の高いレーベルだと思う。翻って日本の状況を見てみれば、いかにも広告代理店的な発想でグリーンウッドに映画音楽書かせちゃうんだから、レベルが低いと言うべきか、ほんとイヤになっちゃうよね。