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(第3回)古き良き韓国歌謡を爆音で!

連載
長谷川陽平のソウルで勝手に生きてます。
公開
2012/08/01   18:00
更新
2012/08/02   14:30
テキスト
文/長谷川陽平


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チャン・ギハと顔たちでギタリスト/プロデューサーを務める日本人メンバー・長谷川陽平が、ソウルはホンデに集まるミュージシャンの生態に迫る連載! 第3回は、レトロ・ブームに沸く韓国で好事家も唸らせるディープな呑み屋のお話です。



この〈ソウルで勝手に生きてます。〉を書いていてふと思ったこと、それは……結局酒関連の話ばっかじゃねぇか!!ということであります。でもしょうがないんですよ、こっちでコミュニケーションを図るときに重要なアイテムなので――ということで、今回も酒関連です(笑)。



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実は最近、韓国は古いものや過ぎ去った物事を振り返る、言わばレトロ・ブーム的な感じになっておりまして、それがK-PopやK-Rockにも影響を与えているような状況になっているんですよ。私事ですが、チャン・ギハ君と週に1回、ラジオでヴァイナルだけで音楽をかけるというコンセプトのコーナーをやっているのですが、これがかなりの話題になっていて。すると中高生から、〈レコードって何曲くらい入るんですか?〉〈頭出しはどうやってやるんですか?〉〈どんな色でどんな形なんですか?〉という質問が山ほど寄せられており、ちょっとカルチャー・ショックを受けたりしております。ここ数年、ソウル市内では古い建物を再開発対象として壊し、そこに大きな高層マンションを建てるという光景もよく見る反面、〈古い物に注目〉という真逆のことがちょっとしたブームになっているのも皮肉なもんですが……まぁ何と言いますか、いままで〈成長!! 成長!!〉と一生懸命に近代化をめざして走ってきた韓国の人々が、一息ついて後ろを振り返る余裕ができた……的な感覚なのでは?とも、何となく思えるわけでして。

で、弘大付近にもその〈韓国レトロ・ブーム〉を睨みつつ、10数年前から韓国の60年代~70年代の雰囲気をプッシュし続けている呑み屋があるんですよ。呑み屋なのに名前は何と〈モツ鍋(コプチャンジョンゴル)〉(笑)。変わり者の店長らしいネーミングですが、入った瞬間から70sのソウル(〈Soul〉ではなく……いや、むしろそうかもしれないが……)の空気が感じ取れますよ。

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DJブースにリクエストをすると、50年代~90年代中頃くらいまでの韓国歌謡~K-Popならだいたいはストックしていますので、爆音で古き良き韓国歌謡(しかもヴァイナルがほとんど!!)を聴くには最高の場所であります。

酒が程良く入った1時~2時くらいになると、流れる曲に合わせて大合唱。踊り出すわ叫ぶわの凄い光景が見られます(笑)。私も個人的に日本人の友人たちを連れて行くことも多いのですが、全員が相当なショックを受けてしまって……日本に帰っても、〈ああ、コプチャンジョンゴルに行きてえ!!〉と叫ぶまでになるわけです。

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もちろんミュージシャンの常連も多く、ここに行くと〈あれ!? 久しぶり!!〉とか、店の奥のほうから酒臭いヤツが〈アニキぃ!!!〉と叫んで抱きついてきたりするんです(笑)。年末や店長の誕生日パーティーなどでは楽器を持ち込んで馴染みのバンドたちが演奏したり、その場にいるミュージシャンが代わる代わるセッションしたりDJしたりと、いかにこのお店と店長がミュージシャンに愛されているかがわかるんですよ。あ、ちなみに私と店長はもう10年以上前からの付き合いで、当然私もしょっちゅう顔を出しています。

最近は似たようなコンセプトのお店が乱立している状態ですが、ここコプチャンジョンゴルに行ってこそ、魂に〈弘大エキス〉が注ぎ込まれるというもの……マッコリといっしょにグッと体内に流し込んでみてはいかがでしょうか!?



PROFILE/長谷川陽平



韓国のバンド、チャン・ギハと顔たちのギタリスト兼プロデューサー。95年に韓国へ移住し、トゥゴウン・カムジャやサヌリム、ファン・シネ・バンドなどで活動。現在は他にもミミ・シスターズや美男美女の〈美男〉ギタリストを務めたり、若手パンク・バンドのルック&リッスンのプロデュースなども手掛けている。最近は7インチ病。8月19日(日)の〈サマソニ〉東京公演にて、チャン・ギハと顔たちが〈ISLAND STAGE 〜ASIAN CALLING〜〉に出演決定! いつもここでつぶやいてます→twitter.com/#!/lghopper_yohei