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Jherek Bischoff『Composed』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/09/05   12:04
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:若林恵

バーン、カエターノらがこぞって参加するジェリク・ビショフのデヴュー作

本作の情報が入ってきたのはデヴィッド・バーンのメルマガを通じてだった。バーンによれば、彼が本作の主役ジェリク・ビショフを知ったのは、ツアーギタリストを通してで、ジェリクはアルバムにバーンに参加してもらえないかとオファーしてきたのだそうだ。バーンはこう回想する。「人がぼくに仕事をオファーしてくるのは稀なことではないが、ジェリクの送ってきた音源を聴いて稀なことが起きた。それを聴いてぶっとんだのだ…(中略)…彼の曲、アレンジは独創的で、そのくせキャッチーでアクセシブルなのだ」。かくして、ジェリクの楽曲/アレンジの上に、バーンを筆頭とする豪華ゲスト8組(カエターノ・ヴェローゾ、クレイグ・ウェドレン、ネルス・クラインなど)が入れ替わりで登場する全9曲のアルバムが成立したわけだ。

バーンがヴォーカルで参加したカリプソテイストの2曲目の《eyes》などを聴けば、心ある音楽ファンは、すぐさまヴァン・ダイク・パークスを想起することになろう。流麗なオーケストラサウンドは、アルバムを通じて千変万化をしながら、シネマティックで立体的な音楽世界を構築して、飽かすことがない。ミュージカル的といえばそうだが、高解像度にしてクリーンで、かつ参照性の低い浮遊感溢れるこのサウンドは、あるいはPIXARあたりがつくるCGアニメにこそふさわしいものかもしれない。

直接的な参照として、ジェリク自身はオンラインマガジン〈Topman Generation〉によるインタヴューで、ビヨーク、エリントン、ミンガスあたりを挙げているが、この新しい感性を読み解くには、彼が釣りの腕前、菜食料理の腕前がともに一級品で、かつスペシャリティコーヒーマニアであることなどを知っておくのもいいかもしれない。また、読みにくいこの名前、実は本名で、SF・ファンタジーマニアの父がマイクル・ムアコックの『Dancers at the End of Time』3部作に登場するキャラクター〈ジェリク・カーネリアン〉にちなんでつけたものなのだそうだ。

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