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村治佳織

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/09/05   13:38
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:片桐卓也

初期の作品9タイトルをリマスタリング(20bit K2)で再発売!

思いおこせば、村治佳織に最初に取材したのは彼女がデビュー盤をリリースした直後の高校時代のことだった。確かに初々しかったが、その時からすでに揺るぎない自信に裏打ちされた落ち着きを持っていた。ギターのテクニックが優れていただけでなく、作品に対する理解度、それをこちらに伝える時のイメージの豊かさがいまだに記憶の底に残っている。1993年のデビュー盤からすでに20年近くが経過した訳だが、旧譜が再発されることになった。『レスプランドール』(2002)『エステーラ』(2004)『スペイン』(2005)を含む9タイトルだ。上記にあげた3作はスペインとの関わりが深い録音で、『レスプランドール』にはスペインでのデビュー・ライヴの音源も収録されている。

村治は1997年にパリのエコール・ノルマル音楽院に留学し、 99年にはあのホアキン・ロドリーゴの前で演奏をするという機会を得て、その後ロドリーゴと様々な交流を持つ事になった。またスペインの首都マドリードに実際に住み、スペインと日本を往復しながら、自分自身の演奏経験を深めていったのだ。

ロドリーゴの代表的作品である《ある貴紳のための幻想曲》(ロドリーゴ室内管弦楽団との2001年ライブ録音)などを収録した『レスプランドール』、そしてデビュー10年を記念したベスト盤である『エステーラ』にはロドリーゴの珍しい小品の他に、パガニーニの《カプリス第24番(福田進一編曲)》やマイヤーズの《カヴァティーナ》、ヨークの《サンバースト》が収録されているのが懐かしい。『スペイン』はスペインの作曲家を集めたベスト盤で、ロドリーゴ作品の他に、トゥーリナの《ファンダンギーリョ》、ファリャの《ドビュッシー讃歌》なども収録されている。この3作以外のアルバムにも、村治の音楽への深い共感が表現されている。村治のアルバムはスペイン音楽ファンのマスト・アイテムだし、ギター好きのみならず、音楽の世界を共に旅する人たちへのまたとない羅針盤ともなりうるものだ。

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