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SAYAKA y su Palma Habanera『Pa'L Mundo』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/10/03   18:58
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:岡本郁生

日本、キューバを経て世界へ。SAYAKA率いるラテン・ジャズ・クインテットの2作目

バァーっと青い空が広がって行く。そんな爽快なイメージを感じさせるアルバムだ。

ヴァイオリニストのSAYAKAが率いるパルマ・アバネーラ。

クラシックの世界からやがてキューバ音楽に足を踏み入れ、ヴァイオリンとパーカッションを現地のマエストロに師事したというSAYAKA。70年代からジャズ界で活躍し、さまざまなジャンルを股にかけるピアノの大口純一郎。95年からスペインに滞在して活躍、現在は作曲・アレンジなどでも忙しいギターの柴田亮太郎。揺るぎないグルーヴで信頼感抜群のベーシスト小泉哲夫。オルケスタ・デ・ラ・ルスの創始者であり現在はサルサ・スウィンゴサを率いながら幅広いセッションに引っ張りだこのパーカッショニスト大儀見元。

この、ジャンルも年齢もバラバラの5人。たまたまライブハウスで一緒にセッションした際にそれぞれのセンスに一目惚れしてそのままグループを組むことになった。ラテン、ジャズ、フラメンコ、ブラジル、さらに各々がいまの活動の場から受けているいろんな要素が、吸収され、消化されて表現される。無国籍というよりは世界国籍(?)。まさに「パル・ムンド(世界へ)」なサウンドを展開しているのだ。

オープニングは、ハバナの旧市街だけでなく、ビエホ・サン・フアン、あるいは那覇…どこの熱帯の街にも似合いそうな《Centro Habana》。ラテンが強烈に主張するわけではなく、いわば極上のフュージョンである。全編を通して、ヴァイオリンを中心に各人が丁々発止のやり取りを繰り広げているのだが、ソロのぶつかり合いというよりはリズムやアレンジの豊かなヴァリエーションがとても印象的で、ビートルズやエディ・パルミエリ、ミルトン・ナシメントらのカヴァー曲もまったく違和感なく溶け込んでいる。ラスト曲、キューバの子守唄ではSAYAKAがヴォーカルに初挑戦。ちょっと聞くとぶっきらぼうにも響く中性的で不思議な温かさは、彼女の新境地であろう。

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