SAKEROCK 『ホニャララ』 (2008)
完全インストでまとめられた3作目。元メンバーの野村卓史(キーボード)と、チェロ&ヴァイオリン奏者をゲストに迎えた7人編成で、じっくりと時間をかけて制作に取り組んだという。アナログ・シンセとストリングスが絶妙なアンサンブルを奏で、エンジニアの内田直之による広がりのあるミックスもナイス。まさに一級酒のような味わいだ。*村尾
イルリメ 『メイド イン ジャパニーズ』 (2009)
グッドタイム・ミュージック風の“この町へおいでよ”や“ミュージック”、〈めんどくさい!〉の連発で突っ切る“カレーパーティー”、二階堂和美への提供曲と連作となるブレイクコア風の“今日を問う”をはじめ、アッパーな曲がズラリと揃った。一人でこれほどパーティー感たっぷりのポップスを聴かせてしまうエネルギーには脱帽だ *岡村
MU-STARS 『BGM LP』 (2009)
4年ぶりにリリースされた2枚目のフル・アルバムは、MPC 2000で全編制作されている前作とは異なり、プロトゥールスなども多用してより自由な音楽表現を手にした。ブレイクビーツの心地良さも踏襲しながら、美しさをめざすようにした進化の跡が窺える。この作品の発表後、彼らはバンド・セットでのライヴも展開している。*宮内
YOUR SONG IS GOOD 『B.A.N.D.』 KAKUBARHYTHM/ユニバーサル(2010)
前作でパンクの衝動を見つめ直した彼らが、改めて多彩な音楽をゴッタ煮にし、進化を窺わせた4作目。バンドの10周年記念ライヴ&ドキュメンタリーDVDの主題歌として制作された“B. A.N.D.”や直球の愛の歌“THE LOVE SONG”など、彼らの〈LIFE〉と〈LIVE〉と〈LOVE〉を凝縮した傑作である。*宮内
イルリメ 『360° SOUNDS』 (2010)
文字通り360°、全方位外交のように多彩な一枚。(((さらうんど)))の礎とも思えるAOR風に仕立てられた“トリミング”の新録、KIRIHITOの“君にメロメロ”をサンプリングした“HELLO MELLOW”、DJ名義で発表したナンバーにラップを付けた“フィジカルグラフィティ”など、5曲入りながらも彼の奔放な魅力が凝縮された内容だ。*岡村
キセル 『凪』 (2010)
マイペースに制作活動を行う2人の最新オリジナル作品。音数を絞って間合いを活かしたグルーヴや柔らかなメロディー、そしてアコースティックなサウンドと電子音のささやかな交流が、アルバムに心地良い穏やかさ(=凪)を生み出している。まるで散歩しているうちに、見知らぬ街に迷い込んだような緩やかなトリップ感も絶妙な味わい。*村尾
SAKEROCK 『MUDA』 (2010)
エレキ・ギターの豪快なカッティングで幕を開ける4作目は荒々しいタッチが印象的で、これまで以上にパワフルでロッキッシュな勢いに満ちている。人懐っこいメロディーやユーモラスなアレンジといった和みテイストは残しつつ、そこにソリッドなギターやプログレッシヴな展開の曲が加わって、何かが吹っ切れたように大胆でラウドな仕上がり。*村尾
鴨田潤 『一』 (2010)
歌とみずから鳴らすギターだけで構成されたイルリメの本名名義作は、ストイックなまでに慎ましく簡素な内容に。自身が作詞&プロデュースを担当した『二階堂和美のアルバム』でも発揮された詩情豊かな言葉と、感情を抑制したような静かな語り口のヴォーカルが、音楽活動の傍らで小説を執筆したりする彼のインテリジェントな側面を伝えてくれる。*岡村
二階堂和美 『にじみ』 KAKUBARHYTHM/Pヴァイン(2011)
全曲オリジナル、セルフ・プロデュースで挑んだ目下の最新作。都はるみばりのコブシを利かせた民謡~演歌調の“説教節”、ラウンジ・ジャズ風の“ネコとアタシの門出のブルース”、爽やかなサンバ・スタイルの“お別れの詩”など曲調はさまざまで、表情豊かなほんのり甘辛い歌に思わず〈もらい泣き笑い〉してしまう。*岡村
cero 『WORLD RECORD』 (2011)
60年代ロックの匂いを漂わせながら、ヒップホップやポスト・ロック的な音響をさらりとブレンド。メロウだけどエッジは鋭く、美しいけどどこか壊れている。かつてはっぴいえんどが奏でた幻想都市の音楽を、スティールパンやマリンバなどさまざまな楽器を駆使した豊かなアンサンブルと実験精神でアップデートするロック・オーケストラ。*村尾
(((さらうんど))) 『(((さらうんど)))』 (2012)
『一』で歌に目覚めたイルリメこと鴨田潤が、Traks Boysと結成したユニット。佐野元春“ジュジュ”をカヴァーするなどシティー・ポップのイメージを下敷きにしながら、Traks Boysによるシンセ・サウンドと鴨田の歌声が蛍光色の火花を散らす。その懐かしいようでモダンなサウンドは、SFジュブナイル小説のような甘酸っぱさ。*村尾
★ニュー・アルバム『My Lost City』を完成させたceroのインタヴュー記事はこちら