至高のニーナ・シモン集
ニーナ・シモンが生誕80周年を迎えるという。それを記念して、ジョー・ヘンリーをプロデューサーに迎えた『Weather』からそれほど間をあけずに、ミシェル・ンデゲオチェロが彼女に捧げるトリビュート・アルバムを作った。なんて素敵なお祝いだろうか。その内容も予想に違わず素敵で、《Black Is The Color Of My True Loves Hair》の闇を泳ぐような歌声を耳にすれば、とりあえず空を見上げて、おめでとうと叫ばずにいられなくなるに違いない。フォーク、ロック、ポップス、R&Bなどあらゆるジャンルを採り込み、真の意味でのクロスオーヴァー・ミュージックを作り出したジャズ・シンガー兼ピアニスト、ニーナ。人種問題に真正面から抗議し、さまざまな差別と戦う姿勢を示し続けたこのシンガー・ソングライターのスピリットは、同じく独自の音楽を追求するミシェルがしっかりと受け継いでいることを本作は分からせてくれる。いや、前々から分かってはいたけど、彼女のなかでその意志が予想以上に熱く脈打っているという事実を深く理解させてくれるのである。ミューズにカヴァーされた《Feeling Good》やアレサ・フランクリンやダニー・ハサウェイでも知られる《To Be Young,Gifted And Black》といった名曲の世界観に見事に溶け込んでいるミシェルの素晴らしき歌声の数々。冷ややかな雰囲気を醸すエンディングの《Four Women》なんて、なかなか鳥肌が取れなくなってしまうぐらいの素晴らしい出来だ。また今回はリズ・ライト、トシ・レーガン、ヴェレリー・ジューン、コーディ・チェスナットと色とりどりなゲストが揃っていることにも注目すべき点。ブルース・ナンバー《Don't Take All Night》では、シネイド・オコーナーも登場。息のあったデュエットを聴かせているが、実際どれもこうやって欲しかった! と膝を打ちたくなるテイクばかりで、叩き続けた箇所が腫れ上がってしまったほど。至高の音楽を求める人にぜひ。