脱オルタナティヴ。いま、バッド・プラスこそが主流派なのだ!
10年ほど前に、グランジロックや80'sロックアンセムの轟音ジャズカヴァーで注目を集めた彼らも、2010年リリースの前作『Never Stop』では、初の全曲オリジナル作品で、トリオでの10年余りの活動の成果を音楽的に集大成し、新たな第一歩を踏み出しました。
2年ぶりの新作となった今作では、前作からの流れを継承しつつ、ゆっくりと着実に進化する彼らのトリオロジーが堪能できます。ジャズはもちろん、ロックからクラブミュージック、クラシック~現代音楽まで、ありとあらゆる音楽への探究心と、それらをパンクロックの精神で、オーガニックにマッシュアップしてしまう彼らの猥雑さは、この10年あまりでさらに精巧さと成熟度を増しました。3人のメンバーのそれぞれが、ザ・バッド・プラスを基盤に、様々な課外活動を行うことで培った音楽家としてのエネルギーを、見事にトリオのアンサンブルにフィードバックし、アンサンブルとしての鮮度は、時が経つにつれ経年劣化するどころか、より成熟した斬新ささえ感じさせます。
今作でも、エレクトロニクスをさらりと取り入れたり、毎作斬新な切り口で聴かしてくれる彼ら流のミニマル・ミュージックもアップデートされ、そして偉大なるジャズ・ドラマーであり、絶世のメロディメイカーでもあった今は亡きポール・モチアンの作品で締めくくられる一枚には、音楽家として「何かおもしろい音楽を生み出そう」と10年あまりに渡って悪戦苦闘してきた彼らの力強さが満ちあふれています。
オルタナティヴなピアノトリオとして、新たなるマイルストーンを打ち立てつつ進化する孤高のピアノトリオ、ザ・バッド・プラス。彼らのキャリア最高傑作は、常に最新作というところが、本当にスゴいと思います。本年度を代表する聴きどころ満載の充実作が、ついに解禁。