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POP LEVI

連載
NEW OPUSコラム
公開
2012/11/07   00:00
ソース
bounce 349号(2012年10月25日発行)
テキスト
文/村上ひさし


ロック・シーンきっての変わり者が処方する〈Medicine〉は、とんでもなく中毒性高し!



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プリンス系のひしゃげたドラムがペシャペシャと打ち付けられるなか、性急なギターがブリブリ駆け巡る先行シングル“Strawberry Shake”の変態ぶりに悶絶した人も多いだろう。相変わらずポップなんだけど、いわゆる〈ポップ・サウンド〉とはまるで違ったヴェクトルに進んでいるポップ・リーヴァイ。LA在住のUKロッカーが4年ぶりとなるニュー・アルバム『Medicine』を引っ提げて戻ってきた。その曲のPVでは、アンディ・ウォーホルも真っ青のアヴァンギャルドなポップアートを展開。こりゃ素直にカッコ良いぞと認めるしかない。

しかし、なぜ4年も掛かったのか。本人いわく〈自分のなかにある別の人格でレコーディングしてから普段の自分に戻り、その後ずっとひとりでセッションを続けていたんだ〉とのこと。いまひとつチンプンカンプンな説明だが、アルバムの音を聴いてみれば、結構頷けるかもしれない。ノルウェー、ギリシャ、LAのホーム・スタジオでレコーディングしたという本作は、分裂症的でありながらも、ピシっと一本筋が通っている。

ブルース、ファンク、ガレージ・ロックに、サイケ、ブギー、ゴーゴー、エレポップとキーワードだけを書き連ねると実に多様に聞こえるものの、彼のエキセントリックなヴォーカルが牽引していく形で、どんなスタイルであろうと自分のカラーに染め上げてしまう。そのあたり、やはりプリンス殿下に通じるカリスマ性を感じてしまうのだが、同じようにひたすらギターをひとりでバリバリ弾きながら歌う姿からは、彼自身が敬愛するというマーク・ボランの面影や、もっと最近の人に例えるならばジャック・ホワイトの面影が浮かび上がってくる。具体的に書くと、痛快ブギーなメロディーセンスはT・レックス譲りだし、ささくれ立ったポップ感覚はホワイト・ストライプス譲りといった見方もできそうだ。

前作『Never Never Love』のジャケ写では女物の着物を羽織っていた彼だが、普段からそういう服装をすることも多く、既成概念を捻じ曲げたいのだとか。そういう意味ではこの新作も同様の目的を果たしている。〈ポップソングなんて……〉と思っている人にこそ聴いてほしい。なぜなら、これは〈ポップ〉の既成概念をあっさり捻じ曲げてくれるに違いない一枚だからだ。

 

▼ポップ・リーヴァイの作品を紹介。

左から、2007年作『The Return To Form Black Magick Party』、2008年作『Never Never Love』(共にCounter)