チャン・ギハと顔たちでギタリスト/プロデューサーを務める日本人メンバー・長谷川陽平が、ソウルは弘大(ホンデ)に集まるミュージシャンの生態に迫る連載! 第6回は、弘大のミュージシャンも御用達の地元密着型レコード・ショップを紹介します
さてさて、前回の記事には……〈ようやっとbounceに相応しい記事を書いたねぇ!!〉という声も出ていたようです(笑)。ソウル、さらに弘大の住人として、むしろ普段の生活を曝け出して書いていたのですが、まさか音楽のことがこれだけ後回しになるとは(笑)。
……で、まあ今回もやはり音楽に関係したこと……しかもわれわれ〈ミュージシャン〉と〈リスナー〉との窓口になる場所であるCDショップを取り上げます。いまは世界中でその傾向にありますが、ここ韓国でもやはりネット・ショップ、オフラインですと大型店にお客さんが集中する傾向にあります。ただしそうしたお店はいわゆるK-Popが中心でありまして、われわれ弘大派インディー・レーベルのモノはポツポツとある程度なんですよねぇ。ところが……流石はわが弘大、インディー・バンドのアルバムを取り揃えたミュージシャン密着型のショップが2件あるので、今回はそこを紹介したいと思います。
まずは弘大正門のすぐ近くにある〈Purple Record〉です。インディー・バンドのアルバムはもちろんですが、ミュージシャンも〈自分探し〉(!?)にたびたび訪れるお店であります。個人的にもよく行っており、ミュージシャン相手にはまけてくれるという、マインドの素晴らしい店長さん(アクは強いですが……)が経営しております。最近はヴァイナル方向にシフトしつつあり、まだそれほど揃ってはいないのですが、海外アーティストの新譜がリリースされるとCDとヴァイナルを両方置くような感じになりつつあるようです。中古もボチボチあり、買取もしているとのこと。mp3などのファイルで音楽を聴く人が多い韓国ですが、少しずつではあるものの、ヴァイナルで聴く人が増えてきています。世の流れに敏感に対応し、いち早く品揃えをシフトさせるような店長の熱意が、いままで生き残ってこられた理由のひとつかもしれませんね。
そしてもうひとつ、隣町の新村(シンチョン)は延世大学の正門近所にある〈ヒャン音楽舎〉です。ここは日本の音楽が開放される前から、特に〈渋谷系〉と言われた日本のアーティストのアルバムを独自に輸入/販売し、弘大のミュージシャンに与えた音楽的な影響は絶大で、いわば〈インディー・ミュージシャンのアジト〉のようなお店であります。最近の一押しとなっている10cmとミューズのポスターが並んでドンと貼ってあるのがおわかりでしょうか?
90年代以降の英米のロック、弘大系アーティストたちのアルバム在庫量はなかなか豊富で、ここのチャートを見ればいま弘大で何が売れているのかがわかるとまで言われており、ここでしか手に入れられないアーティストのアルバムも多数あります。この日は私が6年間在籍していたキムCのバンド、トゥゴウン・カムジャ(HOT POTATO)の新作『Who Doesn’t Like Sweet Things』がさっそく入っておりました。韓国インディーに興味のある方はぜひ訪れてほしいところです。
韓国は直接来てみてナンボです。タワーレコード然り、この2軒のお店から思わぬ世界へ繋がっていくかもしれませんよ。私だって、17年前にレコード屋を回っていた時にいろいろと繋がっていき、いまがあるワケですから……。
PROFILE/長谷川陽平
韓国のバンド、チャン・ギハと顔たちのギタリスト兼プロデューサー。95年に韓国へ移住し、トゥゴウン・カムジャやサヌリム、ファン・シネ・バンドなどで活動。現在は他にもミミ・シスターズや美男美女の〈美男〉ギタリストを務めたり、若手パンク・バンドのLook & Listenのプロデュースなども手掛けている。いつもここでつぶやいてます→twitter.com/#!/lghopper_yohei