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ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団『マーラー:交響曲全集』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/11/09   21:32
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
text:藤原聡(梅田NU茶屋町店)

ヤンソンス、ハイティンク、ブーレーズ、マゼール他豪華指揮者との記録

凄すぎ。筆者はRCO及びRCO LIVEシリーズのファンであるが、このセットには驚いた。当セットはマーラー生誕150年/没後100年である2010年度~2011年度のシーズン(2009年~2011年)に開催されたマーラーの交響曲全曲演奏会を収録したものだが、内容詳細は別項に譲るとして、大半のファンにとっては、今まで音盤上では存在しなかった指揮者とRCOの組み合わせによる演奏に特に興味を持たれるのではないか? その点からピックアップすれば、第1番でのハーディング、第4番でのイヴァン・フィッシャー、第5でのガッティ、第6でのマゼール、「大地の歌」及び交響詩「葬礼」でのルイージ、第10(クック版)でのインバル、が注目である。ファンなら先刻ご存知だろうが、このオケは、いわゆる欧米の名門オーケストラの中でも特に柔軟性があり、指揮者の要求に実に積極的に反応して「同化」してしまうのだが(それはアーノンクール、ハイティンク、コリン・デイヴィス、カルロス・クライバー、バーンスタインらの諸演奏を想起すれば容易に納得されよう)、その中でかつRCO独自の持ち味もしたたかに打ち出してくる(但しベルリン・フィルやウィーン・フィルのような「これ見よがし」な表出のされ方にはならないのがオランダの国民性?)。その辺りの指揮者とオケの妙なる「化学変化」をタップリ堪能するのに、マーラー以上によい素材があるだろうか? しかもHD機器収録による最高音質と画質。RCOそしてマーラー・フリークはこの上何を望もう?  ところで余談。2005年のアムステルダム訪問の際コンセルトヘボウを見学をさせて頂いたのだが、何とステージにも上らせてもらうことが出来たのだ。そしてあの唯一無二の、ホール上方背後からステージに延びるアーティスト登・退場用の階段も歩くことができた。つまり、メンゲルベルク、ベイヌム、R・シュトラウス、そしてわれらがマーラーと全く同じ空間を共有したということである。ゲニウス・ロキ(土地の精霊)を感知した瞬間、思わず、震えた。