刺激的なNYでの青春期、慈悲に溢れた後の日々を回想する2作品
NYパンクの女王、パティ・スミスが〈ただの子供(ジャスト・キッズ)〉だった頃——その青春時代を綴ったのが自伝「ジャスト・キッズ」だ。67年、アーティストになることを夢見て、シカゴから無一文でNYに出てきた彼女。仕事も友人もなく、野宿の日々を送る最中に出会った運命の人は、後に写真家として名を馳せるロバート・メイプルソープだった。やがて若いカップルはアンディ・ウォーホルやジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックス、ウィリアム・バロウズらさまざまなアーティストと知り合い、自分たちの才能を開花させていく——熱気溢れるNYを舞台に、恋と芸術の日々を詩情溢れる文体で綴った本書は、NYという不思議の国に迷い込んだ少女のお伽話のようだ。
また同時に、80年代から2007年までのパティの詩をまとめた「無垢の予兆」も刊行されている。亡くなった夫や弟、妹をはじめ、〈失われたもの〉に対する思いに満ちた詩の数々。そこに悲しみよりも深い祈りを感じさせるあたり、彼女の最新作『Banga』に通じるところがある。
▼文中に登場した作品。
左から、パティ・スミスの自伝「ジャスト・キッズ」(河出書房)、パティ・スミスの詩集「無垢の予兆」(河出書房)