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《ジェームズ・ボンドのテーマ》をこよなく愛する人たちへ

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公開
2012/12/21   00:00
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text:吉川明利(映画案内人)

こ、こんなドラマチックな『007』は見たことない!傑作だ!いや、名作だ!

その感動の演出に一役買ったのが、あの聞きなれた《ジェームズ・ボンドのテーマ》だったのは、映画を観れば一目瞭然だろう!

その前に主題歌の話を少しだけ。

昨年のグラミー賞の主要部門を総ナメにしたアデルが、製作50周年という記念すべき新作『007 スカイフォール』の主題歌を唄うと聞いたときの印象は「なぁるほど、合ってなるなぁ、製作陣の感覚ズレてないぞ!」だった。映画の製作国であるイギリス出身という継りだけではなく、彼女が持つハスキーな声質が正に007の主題歌には適任なのですね。

そもそも歴代のシンガーの中で、女性の占める役割が大きいのが007の主題歌です。今年が製作50周年記念ということで、ローリング・ストーン、ビルボードの各誌が「007主題歌ベスト10」を発表しました。ローリング・ストーン誌の1位は『007死ぬのは奴らだ』のポール・マッカートニー&ウィングス、ビルボード誌が『007美しき獲物』のデュラン・デュランと、残念ながら1位はグループに獲得されてしまいましたが、2位以下はほとんどが女性ソロシンガーが選出されているではありませんか!

2度登場したシャーリー・バッシーを筆頭に、カーリー・サイモン、ナンシー・シナトラ、シーナ・イーストン、マドンナ、リタ・クーリッジといった布陣を眺めれば、今回アデル抜擢の流れは至極当然という感じでしょう。そして彼女が唄った楽曲が、これまた007映画としての王道の旋律だったのには、大いに驚きそして納得!

〈過去30年間でベストの主題歌〉と絶賛の声が上がるのも頷けますね。また、一般観客でそれほど007映画を見ていない女性でも、この主題歌を聞いて即「007っぽい!分かる!」と反応したのですよ。それほどまでに007主題歌とは、いつか何処かで聞いた曲として記憶されているわけで、その記憶を呼び覚ましたのがアデルの声だったのです!

主題歌のことはここまでで、本題の『007』=《ジェームズ・ボンドのテーマ》と新作『007スカイフォール』についてといきましょう。そのスコアは通常 オープニングで流れて「さぁ、007が始まりますよ」が毎度のお約束です。要するにインディ・ジョーンズも持っている、ヒーロー登場を知らせるサウンドの 元祖というやつですね。

ダニエル・クレイグの新生ボンドになってから、そのテーマ曲の影が薄くなっていたのも事実。さらに今回『007スカイフォール』には、全くそれがない! 音楽担当が前作までのデヴィッド・アーノルドから、トーマス・ニューマンに変わったからなのか? と不安になった。回を重ねるごとに、どんどん長年見続けてきたオールド・ファンのツボから離れていっているようで、寂しく感じてしまうのですよ。

また、今回の監督がスパイアクション映画とは縁遠いとしか思えないサム・メンデス。イギリス人といえど、家族崩壊を描いた映画『アメリカン・ビューティー』と『レボリューショナリー・ロード』の監督ですよ。その監督と仕事をしてきた音楽のトーマス・ニューマンや、撮影のロジャー・ディーキンスとスタッフは超一流なんだが、それで007がアッサリ作られてしまうとは思えなかったのです!

が、出来上がった作品は最初に語ったように、本当に見事な映画になっていて、これはもう「参りました!」と言うしかない!まさか007映画で泣くとは思いませんでしたね。そのシーンこそ高らかに《ジェームズ・ボンドのテーマ》が鳴り響いた、あのアストン・マーティン登場の場面ですよ。

これぞ、オールド・ファンの身震いするようなツボ、『007ゴールドフィンガー』を見ていたら更に楽しめるぞ! そしてこのテーマ曲がこんなにも迫力あるサウンドだったのかと、驚きと嬉しさで満たされたのです。ここに50年間のボンド映画へのリスペクトがしっかりされていることが確認出来、長年ファンであり続けて本当に良かったと思った瞬間であった!

やはりサム・メンデスもイギリス人であり、自国が誇るジェームズ・ボンドをこよなく愛していたのですね。もうクリストファー・ノーランに撮らせるべき! ということは言わないでおこう。そしてアクション・シーンの撮影の見事なことにも触れなければならないですね。アデルの主題歌が流れタイトルクレジットになるまでの冒頭の13分は、正に西部開拓時代の大陸横断鉄道の上での格闘シーンの様相。ラストのボンドの生まれ故郷スコットランドでの、正義1対悪党多数の構図(サム・ペキンパーの名作『わらの犬』も思い起こさすぞ)も、これまた西部劇! だってライフルとナイフですよ最終的には!

そうなのだ!これは単に007映画50年に対するリスペクトだけでなく、古今東西のアクション・ヒーロー映画に対するリスペクトが成されているのと言えるのですよ!

結局のところMとボンドの関係性を見れば、今回のドラマ要素たっぷりの『007』は、やはり今までのサム・メンデス映画となんら変わることはなかったのでしたね。そしてM、Q、さらに単なる受付嬢ではなかった彼女まで含めて、今後どうなっていくのか益々楽しみになってきたぞ!

永遠なる《ジェームズ・ボンドのテーマ》に乾杯!!!

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『007 スカイフォール』

監督:サム・メンデス
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ダニエル・クレイグ/ジュディ・デンチ/ハビエル・バルデム/レイフ・ファインズ/ナオミ・ハリス/ベレニス・マーロウ/アルバート・フィニー/ベン・ウィショー/ロリー・キナー/オラ・ラパス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
12月1日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開中!
http://www.skyfall.jp/

映画「007」シリーズ50周年を記念して、50サイトが集結。
http://skyfall-50news.jp/