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Scott Lafaro『ディープ・イン・ア・ドリーム:スコット・ラファロ・ライヴ 1958 』他──生まれ変わった3枚のヒストリカル・レコーディングを聴く

公開
2012/12/26   17:38
ソース
intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)
テキスト
text:上村敏晃

ジャズ史に輝かしい足跡を残した3人の名手のプレイを記録した貴重な音源が、DSDマスタリングされ、高音質での再発となった。3人の名手とは、アルトサックスのアート・ペッパー、ベースのスコット・ラファロ、ギターのウェス・モンゴメリーである。アルバムはどれも以前にリリースされたことがあるものだが、今回は、未発表音源が加えられていたり、資料としてさらに正確を期するために表記や曲順が変更されたり、アルバム・ジャケットがリニューアルされたり、ファンにとっては嬉しいアレンジが施されている(3作共、アルバム・タイトルが変更されている)。

アート・ペッパーのアルバムは、57年に米国の人気TV番組『スターズ・オブ・ジャズ』に出演した際の演奏が収められていて、新たに3曲の未発表音源が加えられている。当時のアート・ペッパーは、名盤として知られる『…ミーツ・ザ・リズム・セクション』『モダン・アート』などを吹き込み、プレイヤーとしての創造性に満ちていた。本作では、彼ならではの閃きが輝きを放つ、絶妙の語り口のアルトサックス・プレイも収められている。

ビル・エヴァンス・トリオでの活躍が鮮烈なスコット・ラファロ。彼は61年に25歳の若さで夭折したが、今回リリースされたアルバムには、58年に上述のペッパーが出演したのと同じ番組に出演した際の演奏11曲とレコード・ショップでのリハーサル・セッションの演奏1曲が収められている。ビル・エヴァンスに抜擢される前年の演奏だが、若くして既に揺るぎない自らの音楽の芯を備えていて、存在感のあるベースの音は格別だ。2曲に女性シンガー、ルース・プライスが客演。本作では、前回発売時とは曲順が変更されている。

ウェス・モンゴメリーの演奏が聴ける『ア・グランド・ナイト…』は、以前、ウェス名義のアルバムとしてリリースされたことがあった。じつは、ここで聴けるのはラジオ番組に出演した際のカルテットによる演奏だが、そのリーダーはピアニストのビリー・テイラーであり、ウェスは参加メンバーの一人であった。そして、このセッションに客演しているのが男性シンガー、ジョー・ウィリアムズだ。今回のリリースでは、アルバム・タイトルがビリー・テイラー名義に変更されている。といっても、むろん、内容に変更はない。当時、絶好調だったウェスのギター・プレイは申し分なく、知性と気品とモダンな感覚を併せ持ったテイラーのピアノ・プレイにも聴きどころが多いし、ジョー・ウィリアムズのスタイリッシュな風情を湛えたヴォーカルも魅力的だ。

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