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倉内太の愛してる爆笑盤(第2回)

連載
皿えもん
公開
2013/01/21   14:00
更新
2013/01/21   14:00
テキスト
文/倉内太


アーティストが各テーマに沿ったお皿(CD)を紹介する連載! 倉内太が、愛しているからこそ言いたくなる〈こいつバカだー〉盤、聴くと爆笑してしまう盤を紹介します! なんとなく鬱々した時、飽き飽きした時、笑えなくなった時にどうぞ!



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THE WHO 『A Quick One』 Reaction/Polydor



こんにちは! 倉内太です。今回も楽しく爆笑盤を紹介していきます。

2回目は66年に発表されたザ・フーのセカンド・アルバム『A Quick One』です。
初めて聴いた時、〈爆弾じゃん〉と思いました。
本物の爆弾は恐いですが、古いアニメでお話の終わりに悪者が爆弾でボーンってなるやつ――あの爆弾の感じですね。

不気味にキラキラ光るジャケット、怒れるポップ。
部屋で暴れ回っているのを録音したみたいなドタバタした音。
ヴォリュームを上げたくなってくる。
耳鳴りがしてくる。

蒸気機関車のように煙を上げるキースのドラム。
歪んだギターのようにド真ん中で突き抜けるえげつないジョンのベース。
ブルースのようにいかつく歌い、時に無感情に歌うロジャーのヴォーカル。
全部の音のなかでなんとか自分がいちばん目立とうとズルするピートのギター。

最後の曲“A Quick One, While He's Away”は10分近くあるロック・オペラです。
男の帰りを待つ女の物語で、6つの短い曲が物語になって繋がっています。
美しいメロディーと古典的なストーリー、手作り感のあるコーラスが素晴らしいです。
後半に〈チェロチェロチェロチェロ……〉という可愛いコーラスが入るのですが、本当はチェロを入れたかったんだけど結局実現できなくて、〈チェロチェロ……〉というコーラスになったとか。

このアルバムで僕がいちばんグッとくる曲は、“So Sad About Us”。
大好きな曲です。

〈歌詞の一部〉
なんて悲しい俺たち/ほんとに悲しいぜ
二人の仲が壊れるなんて思ってもみなかった
たぶんもうやり直せないよな/最悪だぜ
謝ったってなんにもならない/これだけ傷が深かったら
お前が太陽を消せないのと同じように
俺だってお前への愛を消せないさ

別個の感情が一気に押し寄せてきます。
悲しみの気持ちのまま僕の心は爆笑します。
ピート・タウンゼントの言葉にこんなのがありました。

〈ロックンロールは、別に俺たちを苦悩から解放してくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま躍らせるんだ〉

まさにこの感じなんです。

アルバイト代をすべてレコードに使って、自分は特別な奴だと思い込むどこにでもいるガキ。
彼らを鬱々とした気持ちのまま躍らせてくれる音楽。
曲が終わったら何にも残っていないのに、キツい日常しか残っていないのに。
何にも残らないのに、その一瞬はそれがすべてのように思える。

僕もそんな強烈な勘違いを与えられる歌を歌います、止められないから。
2013年の日本にいる人たちを躍らせます。
よろしくどうぞ。

最後まで読んで下さってありがとうございました。
倉内太でした、また書きます♪



PROFILE/倉内太



83年、埼玉生まれのシンガー・ソングライター。2005年よりバンド活動を開始。2008年に倉庫内作業員のアルバイトに採用されたことがきっかけとなって意欲的に曲作りを始め、弾き語りライヴも行うようになる。2009年に自主制作でファースト・アルバム『倉内太と彼のクラスメイト』をリリース。2012年5月に倉内太&ネイティブギターを結成し、バンドでのライヴ活動もスタート。2012年9月に店舗限定でシングル『LIKE A RHYTHM GUITAR』を発表、11月に初の全国流通盤となるアルバム『くりかえして そうなる』(DECKREC)をリリースした。今後は1月30日(日)に新宿LOFTで行われる〈OMOCHI★MOOSIC LIVE SHOW CASE! NEW YEAR FESTIVAL 2013〉に出演予定。詳しくはこちらのサイトでチェック!



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