クラシック音楽の楽しみ方が自ずと学べてしまう!
最新作となる10作目「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」はシリーズ初のオンライン・ゲームとしてこの夏発表され、大きな話題と高い人気を博している。ファミコン、プレイステーション等その時代の主流ゲームシステムへ対応し、進化し続ける「ドラクエ」シリーズ。しかしゲームの根底にある世界観は変わっていない。そして第1作以来、シリーズの音楽もまたすぎやまこういちによるものなのだ。《恋のフーガ》《学生街の喫茶店》《亜麻色の髪の乙女》などのヒット曲、CM曲を数多く作曲し、伝説の音楽番組『ザ・ヒットパレード』を手がけ、その先見性で歌謡音楽界に多大な影響を与えた彼が「ドラクエ」シリーズの音楽に携わったのは1986年のこと。それから四半世紀に渡り「すぎやまこういち」の名前は、それ以前よりもわたしたちに親しみのあるものとなっている。
クラシックを導入した彼の慧眼はゲーム世界に奥行きを、物語に深い彩りを与えた。そう、ゲームのフォーマットに応じてアレンジされているが、元々がクラシックなのだ。(制作開始にイメージしたのも『ニーベルングの指輪』や影響を受けたオッフェンバックなどから)だからこの『交響組曲』も「ゲーム音楽をクラシック風に演奏したもの」ではなく、本来の形に戻したもの。オープニングの金管はさらに高らかに開幕を告げ、弦楽は流麗に物語を紡ぎ、木管は瑞々しい躍動を刻む。オーケストラの醍醐味を詰めこんだ今作は、都響とのコラボによる非常にポピュラリティなクラシックである。クラシックのもつ敷居の高さを意識させず、たっぷりと聴かせてしまう贅沢さ。若い世代にとっては《白鳥の湖》や《クルミ割り人形》より近しく感じられることだろう。それならばいっそ音楽の授業でバッハやヴィヴァルディより先にこの『交響組曲』を聴かせてみてはどうだろうか? クラシックへの先入観が消え、その楽しみ方が自ずと学べてしまえるのではないだろうか。