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山田和樹 『カリンニコフ:交響曲第1番他』『ムソルグスキー:展覧会の絵』『武満徹:全合唱曲集』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/02/26   14:41
ソース
intoxicate vol.102(2013年2月20日発行号)
テキスト
text:雨海秀和(渋谷店)

3つの録音が続けて発売!

まさに「飛躍の時」だった。

指揮者山田和樹。新聞・雑誌・テレビでこの名前を何度目にしたことだろう。新日本フィル、サイトウ・キネン・フェスティバルのオネゲル『火刑台上のジャンヌ・ダルク』、サントリーホールのクセナキス『オレステイア』、日本フィル、合唱『心に花を咲かせよう』プロジェクト、大阪フィル、東京混声合唱団と次々指揮した。取り組む作品も幅広く多彩。これだけの公演を行うと、問われるのがその中身。山田は楽譜に対して真摯に向き合い、読み込み、演奏者を信頼して最大限の力を発揮させることに注力した。音を弾き飛ばすことをさせず丁寧に緻密に音楽を創る山田の長所を存分に発揮した。その中でもオネゲルとクセナキス作品を、同時並行の準備と上演を行い、成功させたのは快挙といえる。

一連の演奏の充実ぶりの証左として、3つの録音が続けて発売となった。昨年初夏に録音されたチェコ・フィルとのロシア音楽、日本フィル《展覧会の絵》他、武満徹合唱作品だ。海外オーケストラとの初録音となったグラズノフとカリンニコフ。一つのフレーズが波のように寄せるたびに色彩を加え、熱を帯び膨らむ。オーケストラの力を信じてその実力を引き出すことに注力。大きなうねりを生み出すことに成功した。後者はスヴェトラーノフの名盤と比べ、同じ作品か? とすら感じる。フランクの交響曲のような構成感が魅力。日本フィルとのストコフスキー編曲《展覧会の絵》は豪壮華麗。ストコフスキー自演盤よりあざとい表現も行っているが、それを感じさせないのが凄い。哀愁と巨大さを併せ持つ「ロシア」を感じさせる。 武満の合唱作品は世界にも通用する精緻な演奏。また 「全作品」収録で、資料価値も高い。

山田は今後、スイス・ロマンド管弦楽団と数多く共演する。その録音も早く聴きたい。また2014年に予定されている来日公演も気が早いが、楽しみだ。