アルバムの世界をさまざまな視点で映像化したユニークな作品集!
最新作『Valtari』を題材にしたシガー・ロスの映像作品集が登場。ハリウッド・デビューも果たしている女性監督のフローリア・シジスモンディや、彼らの作品ではお馴染みのラグナー・キャルタンソン、さらにはヨンシーの実妹であるインガ・ビルギスドッティルなど多彩な顔触れがアルバム各曲を担当し、その世界観を映像で表現している。もちろん、作家によってテイストはバラバラなのだが、どことなく統一されたムードも感じられ、作品全体でパラレル・ワールドのような印象を受けるのがおもしろいところ。そこに通底しているのは、言わば根源的な生命の神秘であり、フェティッシュな映像がサウンドから感じられる神々しさと毒々しさの両方を際立たせている。なかでも、多くの作家がモチーフとした〈肉体美〉を、男女の前衛的なダンスで表現したクリスチャン・ラーソンの“Valtari”、人生に迷った男とカタツムリの奇妙な交流から生死を描いたニック・エイブラハムスの“Ekki Mukk”、時間の止まった世界を軽やかなスキップで一人進む少女が主人公のライアン・マッギンレーの“Varuð”あたりが素晴らしい。
▼シガー・ロスの2012年作『Valtari』(Capitol)