バンダ・セー3部作、大充実のうちに完結!
クリッシー・ハインド(プリテンダーズ)やベックらも顔を揃えた豪華なカヴァー・アルバム『A Tribute To Caetano Veloso』も届いて、カエターノの大きさについて改めて考える機会を得た2012年。そして2013年の年頭、本当に70歳を超えてしまったんだよなという感慨を抱きつつ、この3年ぶりとなるオリジナル・スタジオ・アルバムと向き合う。そんな歳には到底見えない、というのは彼の新作を語るうえで不可欠なこの常套句。それを使わずに済むのならぜひともそうしたいところだけれど、こんなカッコよい作品を聴かされた日にゃ、やっぱり無理だ。バックを務めるのが、ギターのペドロ・サー、ベースのヒカルド・ヂアス・ゴメス、ドラムスのマルセロ・カラードという布陣で、ペドロと息子のモレーノ・ヴェローゾがプロデュースを担当。つまり、ここ数作続いているセー・バンド(バンダ・セー)と組んだロック・テイストの濃い音作りが行われている。さすがに6年間もいっしょに作業を続けてきただけあって安定感は抜群。が、それだけに留まらず、よそじゃ得難い開放感を与えてくれるのがセー・バンドの魅力であり、カリンボーのリズムを採り入れた《O Imperio Da Lei》といった伝統的リズムで下味をつけたダンサブルなナンバーなど、創意工夫を凝らしていっそう立体的でカラフルなサウンド・メイキングを手中にしているところにとにかく唸らされる。才気と弁舌に優れているバンドの演奏と一体と化したカエターノのしなやかかつたおやかな身振りを見るにつけ、先のフレーズを口にしそうになるのだけど、このメンバーが生み出す新鮮な空気というか自由な風が彼の老化を遅らせる効果になっているのは間違いない、と再確認させてくれる場面も多々あって。ジャジーでブルージーな4ビート・チューン《Vinco》でのねっとりとした歌唱もたまらなくいい。『セー』『ジー・イ・ジー』に続くこの路線はどうやら完結するという話もある。あぁ、次なる展開が楽しみでならない、と心から思えることが何だかとても嬉しくて。