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第64回――ドキッとNEWデルフォニックス

ESSENTIAL――デルフォニックスと周辺の名盤を紹介!

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2013/03/13   00:00
更新
2013/03/13   00:00
ソース
bounce 352号(2013年2月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次


THE DELFONICS 『La La Means I Love You/Sound Of Sexy Soul』 Kent

共にトム・ベル&スタン・ワトソンが制作した、フィリー・グルーヴからの初作(68年)と2作目(69年)のカップリング。前者には“La La Means I Love You”、後者には“Ready Or Not Here I Come(Can't Hide From Love)”を含み、大半の曲で活躍する甘美で官能的なウィリアム・ハートの歌が悩ましい。両作でリトル・アンソニー&ジ・インペリアルズの曲を取り上げたのは、そのフィリー版を意図したからか。ベル指揮のオーケストラ・サウンドはバカラックの名曲とも好相性を見せる。*林

 

THE DELFONICS 『The Delfonics/Tell Me This Is A Dream』 Kent

こちらは3+4作目。前者は引き続きベル&ワトソンの制作ながら、エレキ・シタールをふんだんに使ったサウンドは前2作より洗練され、滑らか。映画「ジャッキー・ブラウン」でも使われたバラード“Didn't I(Blow Your Mind This Time)”やドラマティックなミディアム“Trying To Make A Fool Of Me”など、男の哀愁を漂わせるウィルバートの歌にも注目。メイジャー初参加の4作目(72年)ではトム・ベルの関与が激減するも、アンニュイな表題曲のバラードなど傑作曲が揃う。*林

 

MAJOR HARRIS 『My Way』 Atlantic/ワーナー(1974)

別記4作目と続く5作目『Alive & Kicking』(74年)に参加後、ソロとして再出発したメイジャー・ハリス。ボビー・イーライらが制作したこの初アルバムは、シルキーでジャジーなバラード“Love Won't Let Me Wait”など、グループでは三番手だった彼が〈フィリーのフランク・シナトラ〉を気取ってハスキーなテナーでムードたっぷりに歌い込む。フィリー・ダンサーも絶品だ。*林

 

MAJOR HARRIS 『Jealousy』 Atlantic/ワーナー(1976)

4月に初CD化されるアトランティックからのソロ2作目。引き続きボビー・イーライやロン・カーシーらがプロデュースにあたり、“Love Won't Let Me Wait”の続編を狙った“I Got Over Love”をはじめ、スロウ・バラードとフィリー・ダンサーのいずれも前作を踏襲しているが、黄金期のフィリー・サウンドをバックに歌うメイジャーに遜色はない。*林

 

3 TENORS OF SOUL 『All The Way From Philadelphia』 Shanachie(2007)

同じフィリーの名門ヴォーカル・グループであるスタイリスティックスのラッセル・トンプキンスJrやブルー・マジックのテッド・ミルズがウィリアムと自慢のハイ・テナーを交え合う共演盤。ウィリアムがソロを取る曲はないが、ソウル名曲カヴァーやホール&オーツを招いた表題曲などでの甘く突き刺すようなファルセットはここでも異彩を放つ。*林

 

THE DELFONICS 『Adrian Younge Presents The Delfonics』 Wax Poetics/BEAT(2013)

本文にもあるように、LAのエイドリアン・ヤングが偏執狂的なこだわりでウィリアム・ハートの歌を守り立てた、ある意味〈疑似デルフォニックス〉のようなプロジェクト作。単に〈フィリー・ソウル〉というと近頃は流麗なダンス・トラックだけを想起する人も多そうだが、モリコーネに影響を受けたというエイドリアンのセンスが再現するのはもちろん初期フィリーならではのバロック・ソウル的な音像だ。そんなわけで、フレンチ・ホルンなどの切ない響きやファルセット歌唱によって哀愁を増す翳った風景は昨今のインディー好きにも馴染みそうで、例えばトロ・イ・モワあたりに通じる面もある。エイドリアンの仕事ぶりについては、このたび入手しやすくなった過去2作も参照されたし。*出嶌

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