ヴィジェイ、ルドレッシュに続く、インド系「第3の男」あらわる!
演奏家のほとんどがアメリカ人であった時代とは異なり、いまやジャズの演奏家はかつてないほどまでに多国籍化しています。ジャズの聖地ニューヨークで本場のジャズを…と思っても、ニューヨークのジャズ・シーンこそが、ジャズ演奏家の多国籍化が最も深化した「コミュニティー」と化しています。ジャズのエッセンス、演奏家自身の文化的ルーツ、そして彼らの音楽遍歴が折り重なり、絶妙なバランス感覚のもと新たな音楽が生み出されています。そしてその音楽は、世代交代の大きな波とセンセーショナルなニューヨーク流のメディアに押し流されて、新たなリスナーのもとに届けられ、シーンはゆっくりと変化しつづけているのです。
ダウンビート誌の表紙を毎年飾るようになったヴィジェイ・アイヤー(P)やジャック・デジョネットの新生スペシャル・エディションにも抜擢されたルドレッシュ・マハンサッパ(as)同様、アメリカ生まれのインド系ギタリストのラフィーク・バーティアもまたデビュー作にして、いま大きな脚光を浴びています。
ラフィークは、2010年にニューヨーク進出後まもなく、インターネット上で制作資金を調達し、恩師でもあるドラマーのビリー・ハートや先のヴィジェイをゲストに迎え、レギュラーカルテットとともにニューヨークで録音を行いました。その後、北ヨーロッパのアイスランドにて、ビョークのコラボレイターとして知られるヴァルゲイル・シグルズソンと共に録音素材に様々な音のレイヤーを重ね、美しくも精巧な作品を完成させたのです。複雑に絡み合うビートといわゆるポストロック的な佇まいをも感じさせる彼のギタープレイのコントラストもさることながら、ライヴではフライング・ロータスのカヴァーを演奏し、プレフューズ73ことスコット・ヘレンらともコネクションのあるラフィークならではのビート感や作品のプロダクションは、極めてユニークな音像を解き放ち、異彩を放っています。今年はチック・コリアとの活動でも多忙を極めそうなマーカス・ギルモア(ds)ら同世代とのプロジェクトも抱えており、今後も注目の逸材です。