ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル〜ファンクを自由に紹介する連載!
【今月の課題盤】TORO Y MOI 『Anything In Return』 Carpark(2013)
今回は、今年に入って発表されたばかりのトロ・イ・モワ『Anything In Return』を紹介します。リリース日の翌日に買いに行ったくらい楽しみにしてました(笑)。トロ・イ・モワはチャズウィック・バンディックという人の一人ユニットなんですが、そもそもこれを知ったのはサカナクションの(山口)一郎さんの自宅へ遊びに行った時。前作『Underneath The Pine』を聴かせていただいて、すごいカッコ良かったので買ってみたんです。僕の周りのラッパーとかヒップホップ界隈の人が、〈今回はちょっと違うテイストで、バンドっぽくなったよね〉と言っていて、僕はそこがいいなと。チルウェイヴというのもよく知らないジャンルなんですけど……まあ、まず彼の素朴なヴィジュアルがイイですね(笑)。
奇跡のシンクロ!
そして今回の作品がリリースされる前、先行PVを観て、前作の感じを残しつつチルウェイヴだとかって枠じゃないところへ行ってるなと思ったんですが、実際アルバムを通して聴いてみても、やっぱりもう前作とは別物。ソウルのアルバムって感じ。歌も小慣れてきてますよね。前作でも歌ってはいるけど、ボソボソ言っててある意味パーカッション的な役割っていうか、音の一部って印象だったのが、今回はちゃんと歌を歌ってる。あと、アートワーク/PVもセルフ・プロデュース感が強くて、多才な人なんですよ。伸びしろがあるっていうといやらしいですけど、ここからまたおもしろくなりそうだなっていうのはかなりありますね。あと、前作と比べてすっごいベースがデカイ、低音が。そこはきっとライヴを重ねるなかで、バンドやってるとよくあるけど、趣向というか意識が変わったんじゃないかなと。まだちゃんとスピーカーを通して聴いてないんですが、これは携帯して聴く作品じゃない気がします。もっとサウンドの下のほうで鳴ってる音がたくさんあるんだろうなと。すごくいいヘッドホンなら聴こえるかもしれないですけどね。
あと、彼の両親がアフリカン・アメリカンとフィリピン系の方ということで、そういうルーツ的なこともあるんでしょうか、独特のファンク観があるような気がします。エレクトロニックな音楽をあまり聴かない僕のような人でも、生っぽい感じ、バンド感があるので自然に入っていけるんじゃないでしょうか。言葉のはめ方、言葉数とかリズムのバランスも良くて、歌いすぎてない。歌詞も明るくなくていいです(笑)。この人、バンド組んだらおもしろそうですよね。実際にタイラー・ザ・クリエイターとコラボしてましたけど、それこそラッパーを入れたりするとカッコイイと思います。
PROFILE/ハマ・オカモト
OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新作『OKAMOTO'S』(ARIOLA JAPAN)が大好評! 現在全国ツアーを絶賛敢行中! また3月6日リリースの『奥田民生カバーズ2』にバンドで参加しています。